「べッカムに恋して」

元気がもらえる!


  

この日も試写会。リサイタルホール。ちょろちょろと空席が目立つ。ぎっちり満席は息苦しいけど、試写会で空席があるのは淋しい気もします。

この邦画のタイトルはどうかと思うけど、映画そのものはなかなか良く出来た作品。
どこかアメリカ映画を思わせるようなストーリーと舞台は、先日観た「SWEET SIXTEEN」と同じ国で作られた映画なのかと思ってしまう。この落差たるや...。

まぁ、それは置いておいて、この映画の主人公ジェスはベッカムに憧れるサッカーが大好きな女子高生。彼女はベッカムの追っかけをしているわけでもなく、スタジアムに試合を見に行くわけでもない。テレビで彼の出る試合を見たり、ポスターを部屋に貼り、寝る前にはそのポスターに向かって話し掛けたりしているだけ。でもそれだけじゃない、彼女は自分でサッカーをプレーすることも大好き。家の近くにある芝生の広場で近所の男の子たちと草サッカーを楽しんでいる。
そして、もう一つ。ジェスはインド系イギリス人なのです。彼女の家では厳格に(?)インドの伝統が守られている(このへんは「ぼくの国、パパの国」を思い出します、こっちはパキスタン系イギリス人だったけどね)。

ある日、いつものように草サッカーを楽しんでいたジェスは、この街にある女子クラブチームから誘われる。今まで本格的なサッカーをしたことがなかったジェスだが、きちんとしたピッチ、組織だった練習、そして真剣な試合。たちまち頭角を表わし、サッカーにのめり込んで行く。
しかし、親にばれてしまう。厳格な母親とかつてツライ目に逢ったことがある父親からは猛烈に反対され、サッカーをすることは禁止。頼みの綱の姉も、取り合ってくれない。
それでも、ジェスはサッカーを通じて知り合ったジュールズの手助けもあり、アルバイトに行くと言って家を出ては練習に、試合にと精を出す日々。いつしかチームは強くなり、ドイツに遠征に行くし、ひょっとしたらアメリカの女子チームのスカウトの目に止まるかもしれないという段階にまで達する。
が、またしても両親に知られてしまい、万事窮須。その上、密かに憧れていた女子チームのコーチとの淡い恋も袋小路に追い込まれてしまう。ジェスの小さな胸は痛む一方...。

確かに、楽天的なお話しだし、ストーリーの流れも想像の範囲内。でも、そんなことは一向に気にはならない。それどころか、楽しくって仕方ない。
そして映画を観ている最中に思わず「頑張れ、ジェス!」って声を掛けたくなる。これでこそ青春映画。いろんな意味でジェスは、映画を観ているボクたちを味方に付けてしまってる。だからボクたちもジェスと一緒に悩み、苦しみ、そして喜べる!
これは作り手の勝利ですね。

暗いばかりがイギリス映画じゃないんだなぁ。嬉しくなる。
それにしても、イギリス系インド人の結婚式には目を見張るね。さすがに「モンスーン・ウェディング」までは行かないけど、なんか炸裂してるなぁ。故郷から遠く離れれば離れるだけ、インドらしさを求めてしまうんでしょうかね。
また、この映画で感じさせられるのが「culture」という単語。異国で暮らす人々は自分が生まれ育った社会が持つ文化を頑なに守ろうとしたり、大切にしようとしたりするんだなぁ(結婚式もいい例ですね)。
そして、その「culture」を打ち破るのは「若さ」なのかもしれません。

ジェス(バーミンダ・ナーグラ)は素敵な女性です、これからも映画に出てもらいたいな、今後おおいに期待できそう。ジュールズ(キーラ・ナイトレイ)はソーラ・バーチの「穴」に出ていたきれいな女の子(確か「穴」では最初に死んでしまう役でしたね)、「穴」のときの方が良かったかな。
ジェスのお父さん、彼もなかなか「いい味」出してます。この映画で一番の演技賞!
ベッカムは最後の最後にチラッと出てくれますよ。
エンドロールが始まってから、いろんな人が唄う「Hot,hot,hot」はこないだの「アザー・ファイナル」でも唄われていた曲ですね。シンプルだけど印象に残る曲。ボクも帰り道に思わず、口ずさんでいました。「Hot♪hot♪hot♪」ってね。
もちろん、オススメ。この映画を観て、ジェスから元気をもらってください!
4/19(土)からテアトル梅田他で公開予定だそうです(「WATARIDORI」も同じだよ)。

おしまい。