「クローサー」

"Close to you" スーチーに近づきたい


  

この日は動物園前のシネフェスタへ。香港映画の「クローサー」を観る。
シネフェスタではレスリーチャンの遺作となってしまった「カルマ」を公開中。さすがに一番奥の最も大きいスクリーンで上映している。このスクリーンへの入り口には簡素な祭壇(?)が設けられおり、チャイセン(阿部野にあるアジア圏のアイドルショップ)提供の悲劇を伝える当日の香港の新聞(林檎日報)が掲示され、花束が捧げられていた。
また、チラシも2種類置かれており、一つは梅田ガーデンシネマでレスリーの追悼上映が決定したお知らせ(4作品)、もう一つは今後企画されるシネフェスタでの追悼上映のリクエストを募るものだった。
今更ながらレスリーの人気を改めて実感する...。

さて「なかなか良い」というウワサが耳に届く「クローサー」。

主演はスーチー、ヴィッキーチャオそしてカレンモク。正直言ってこの三人以外はたいした人は出ていない(いや、社長の弟のフィクサー役で武術の達人のおっちゃんはどこかで見たことがあるような...)。
そして、忘れてはならないのがスーチーの彼氏役でちらちら出てくる眉毛の濃いにいちゃん。この人、韓国でそこそこ人気のあるソンスンホンなんですね、その割には何故か演技がぎこちなく、なおかつセリフは全て吹替え(だと思う)。最初はソンスンホンだと気が付かなかったけど、微妙に違う口の動きと音声のズレが気になりだし、そこでハタと思い出した。今後、彼の香港映画への出演はどうかな?

予告編からして、なかなかスタイリッシュでかっこ良かったけど、本編はもっといい。
何も深く考えず、三人の活躍をただただ眺めていればいい。そんな強引とも思える筋回しを気にせず一気に楽しめる出来栄え。ただ、中だるみと言えば、スーチーとソンスンホンのデートシーンかなぁ。この場面はゲスト出演の彼に気を使いすぎたような気がします。もっとあっさり描いても良かったんとちゃうかな(特にこの二人が始めて出会う回想シーンは不要だと思う)。
まぁ、それはさておき、どこからお金が出てくるのか知らないけど、自宅にハイテク装置を備え、亡き父が開発した世界中の監視カメラ全てを傍受可能なシステムを持つこの二人姉妹は、このシステムを駆使して二人一組で暗殺を請け負う「アサシー(殺し屋)」。姉のスーチーが実行役で、妹のヴィッキーチャオが自宅から姉に指示と情報を流す司令塔役。
そこへ、米国で修行を積んだ辣腕の女刑事(カレンモク)が香港へ帰って来た。そして当然、時を経ずしてこの三人は会い見えることになる!

もちろん全てが荒唐無稽で、現実には有り得ないお話しなんだけど、映画の中で何の衒いも無くストーリーが展開されて行くと「香港ではひょっとしたら...」なんて思わないこともない。
映画って、しらっとかつ強引にありそうにないウソをつき通すことによって、お客さんもウソを承知で楽しむんだな。このところ、そのウソのつき方が下手だったり、ちょっとためらったりする映画を観ることが多かったので、「クローサー」の上手さが目につきます。

出演作がどんどん公開される割には、そのどれもがパッとした役ではなかったスーチー。しかし今回ばかりは魅力全開。彼女は「謎の美女」的な設定よりも、近くにいるけれどどこか謎めいた部分もある(どんな役や?)という親近感を持てる役柄がいい。スーチーはストイックで無表情よりも笑顔が似合うょ、うん。一度コメディに出てもらいたいな、以前と違って広東語も上手になっているハズだしね。
確か大陸出身だったと記憶しているヴィッキーチャオは、詰めは甘いが直情的な妹役を好演。今度は恋愛もので彼女を見てみたいですね。
カレンモクは、すっかり大御所の姉御ぶりを発揮。それでもきっちりアクションをこなしているし、下着姿も披露して下さったのには驚いた。次回はサミーチェンと競演なんてどうでしょう?

しかし、もし世界中の監視カメラをリレーして一箇所で傍受出来るシステムがあったなら、それはそれで怖いな。人知れず殺人や犯罪に使われるならともかく、政府というか管理する側にこれを使われたらと思うとゾっとしますね。それじゃぁ地球全体が監獄と一緒やで!
前半に効果的に使われる「Close to You」。カレンの唄声ではなかったけれど、カーペンターズを懐かしく思い出しました。

香港映画に興味がある方にもない方にもそこそこお楽しみいただける作品です。特に「デアデビル」を観てゲっとなった方なんかには最適ではないでしょうか。
動物園前のシネフェスタの他、梅田では三番街シネマで夕方から2回上映しています。まずまずのオススメ作。

次回は「ピノッキオ」かな?

おしまい。