「スパイダー・少年は蜘蛛にキスをする」

狂人の発想にはついて行けない


  

今回も試写会。会場は本町の御堂会館。
出し物は「スパイダー・少年は蜘蛛にキスをする」。
主演のデニスにはレイフ・ファインズ。
その他、存在感ある演技を見せたのがデニスの父親役のガブリエル・バーン、この人フランスの俳優ジェラール・ランヴァンだと思ってた。そしてデニスの少年時代を演じた10歳の子役ブラッドリー・ホール。

この映画、観る人に何を伝えたかったのかわからない。全く理解できなかった。
結局、狂人の発想にはついて行けなかった、と言うこと。
観ていて愉快なお話しでもないしね。途中で帰ってしまう人まで出る始末。こんなこと試写会では異例だ。

列車が終着駅のホームに滑り込む。客車から吐き出される人々。その最後に荷物を一つ提げ降りてきたのが、くたびれおどおどした表情を見せる中年の男性、デニス。
彼が身を寄せる先は精神障害をわずらった人々が共同生活施設。
ひとまず、ここに落ちついたデニスは、自分の少年時代に起こった出来事を振り返る旅に出る。そして、彼の頭の中で再現される彼の思い出の旅に、ボク達も一緒に出掛けることになるのだ。
彼の目の前には、もう何十年も前に彼が経験したシーンが止め処も無く再現される。
夕食の準備をしている母親とテーブルで喋った内容や、パブに父親を迎えに行ったことなど...。そんな場面一つ一つに大人のデニスは傍観者として立ち会う。
やがて、この思い出の旅路が行き着く先は、デニス少年の家庭が崩壊していく場面だとわかる。

デニス、そして彼の父母、哀れな娼婦(?)のいずれにも、観ているこちらには全く共感できない。それは再現される思い出の旅そのものが、大人になったデニスというフィルターを通してボクたちの目の前で映像化されているからだ。彼の歪んだフィルターはどこまでが事実で、どこからが虚構なのかをボク達には教えてくれない。
どのような過程を経てデニスが狂って行ったのかを再現しているのではない。もう少年の段階でデニスは狂っていたんだなぁ...。

この映画を観ながら、何故か「ビューティフル・マインド」を思い出していました。
唯一、ぞぞっとしたのは、予期せぬ方向から音が飛び出してきた時ですね。あとは、正直言って毒にもクスリにもならない作品だと思います。
3/29からナビオTOHOプレックス他で公開されるそうです。
まっ、おすすめはしませんが、お暇な方はどうぞ。

次回は、ようやく観てきた「旅立ちの汽笛」をご紹介します。

おしまい。