「ウェルカム!ヘヴン」

緊迫感がまるでない凡作


  

こりゃ一本取られました。

想像していたストーリーとは全然違う。ちょっとヒネリが効き過ぎたコメディ。
最近では天国に登ってくる人間は激減して、天国では過疎化が進み、このままでは天国の存続そのものが危ぶまれている(ほんとかもしれないね)。一方、地獄は満員御礼。定員オーバーで、地獄の檻には囚人であふれかえっている(いやはや)。
そんな現状に危機感を抱いた天国の作戦本部長は、ようやく探し出した天国行きの候補生で冴えない中年ボクサーを確実に天国へ来させるためにエージェントを現世に派遣した。それに気付いた地獄側も急遽工作員を現世に送り出す。
二人の天使(?)はこのボクサーの妻と姪に扮して現世に現われる。この二人が繰り広げるハチャメチャがこの映画のお話し。

そもそも、このボクサーが何者で、どうして天国と地獄で奪い合いをするのか? そんな説明は一切無い。と、言うかこのおっさんはハッキリ言ってお話しの添え物にしか過ぎない(天国へ行きそうもないただの我儘なおっさんなんだけどね)。この天国と地獄からの使者二人がこの映画の主人公。
そして、二人もこのおっさんの争奪戦をするわけでも、熾烈な恋の鞘当を演じるわけでもない。それどころか、いつのまにかこの二人は共同戦線を張ってしまうんだから、正直訳がわからない。
この二人がスーパーで働き出してから急に面白くなくなってしまうのだ。

この映画の魅力は、ストーリーや設定よりも、出演者とその見せかたの魅力なんでしょうかね。
天国のエージェントはロラ(ビクトリア・アブリル)、なかなか素敵な女優さんですね。地獄からの工作員カルメンはペネロペ・クルス、アップになると目尻にシワが...。天国の作戦部長はファニー・アルダン、地獄の部長はガエル・ガルシア・ベルナル(「アモーレス・ペロス」、「天国の口、終りの楽園。」なんかに出ていましたね)。
天国のシーン、画像は優雅にモノクロで舞台はヨーロッパ風の洒落た街並み。一方の地獄はごみごみとして薄汚れた灼熱の地下牢で公用語は英語。そんな差別化がなんかお洒落ですよ。
でも、なんかこの映画もうひとつ(いや、もう二つ三つ)。確かに、ニヤっとはさせてくれる。でもそれだけ。

ビデオかDVD化されるのをお待ちになるか、それともTV放映(されるかな?)を待っても充分なような気がします。逆に、今観逃してしまうと、もう二度と観ることが出来ない可能性もあるけどね。
あんまりオススメはしあせんが、興味があればどうぞ。もうしばらくLoft地下のテアトル梅田で上映しているはずです(すいません、もう終わっちゃいました)。

おしまい。