「ヘヴン」 |
これは大人なのための御伽噺なのかもしれない |
予告編を観たときから、何か惹きつけられるものを感じていた。激しく、それでいながら抑制の利いた「大人の愛」を描いているに違いない。そんな香りが漂っていた。
ある意味では、確かにその香りは漂っていた。しかし、ある意味では裏切られた。
サスペンスタッチのようでいて、濃厚かつ淡白な恋愛物語り。
フィリッパ演じるケイト・ブランシェッドは「指輪物語」にも出ていた方。ボクにとってどちらかと言うと苦手なタイプの人だ(これが、違うタイプの女優さんがこの役を演じていたら、この映画の印象全てがガラっと変わってしまうだろう)。意志が強そうに見えて、その実涙もろい。外見的な逞しさにか弱さをあんまり感じないのも一因。それに、この作品では最後まで彼女に対して同情することさえ出来なかった。だいいち、彼女はれっきとした犯罪者であり、綺麗とか綺麗じゃないとか、恋しているとかいないとか、そんなのは関係なく法で裁かれるべき存在なのだ。
しかし、そんなことはさておき、こんな御伽噺のような恋に落ちてみたいという淡い願望は誰の心の中にも巣食っているのは確かだろう。現実的には理性が、現実が、邪魔をしてこんな恋に落ちることはご法度なんだけどね。
冒頭のヘリコプターシュミレーションの画面は意味不明な印象を与えながら、鮮やかにラストシーンに生きている。ここだけ観ても、このお話しが御伽噺なんだと理解できる。 逃避行を続けていくうちに、二人の純白のT-シャツがだんだん薄汚れていくのは何かに対する暗示なのでしょうか?
観る人によってこの作品に対する評価は大きく分かれるような気がする。ボクには駄目だったけど、きっとこの映画を素晴らしいと感じる人も大勢いるに違いない。感動したり涙したりする作品ではないけれど、観終わってからジーンと心に染み入る、そんな大人の映画なのかもしれません。 おしまい。 |