「ダークネス」

そこは闇!


  

とうとう戦争が始まってしまった。この戦争が誰のせいで、何故起こってしまったのかの論評は避けるが、またしてもこの地球上で戦争が起こってしまった事実は「悲しい」と言わざるを得ない。戦争回避のために、ボクは何も出来なかったし、日本政府もほとんど何もしなかった。
こうなった以上、一日でも早く戦火が収まるのを祈るほかはない。

そんな日に「のほほん」と映画なんかを観ていてもいいのか、とも思うけど、映画を観てきました。この日がブルク7での上映最終日だった「ダークネス」。この映画を観る予定はなかったんだけど、この前日の読売新聞の夕刊に「ダークネス」の記事が掲載されていたので、ついフラフラと観に行ってしまった。

信頼関係が崩れ、信頼が「恐怖」へと変わる瞬間ってどんなものだろう。人間は一度恐怖を感じてしまうと、その感覚を拭い去るのはなかなか難しい、そんなことを認識させてくれる作品だ。
観ていても、正直言ってそんなに怖いわけではない。でも、意味不明な霊やお化けといったものより、今そこにいる父親が「怖い」という感覚は、妙にリアルで確かに「怖い」。

一家はアメリカからスペインへ引っ越してきた。街から少し離れた野原にぽつんと建つ一軒家。古い家を改装した。
本来は楽しいはずのここでの暮らしだが、この家族には妙にうきうきしたところは感じられない。娘のレジーナはこの家に来てから、どうもしっくり来ない。家にいても楽しくない。
まだ幼い弟のポールは、夜な夜な幽霊に悩まされるのだが、誰にもそのことは言えないでいる。そして、父親が少しずつ狂いはじめる。最初は軽い発作だけだったのだが...。
幾重にも謎解き(?)が用意されていて、ラストにもどんでん返しが!

正直に観た感想を述べるとすれば「ちょっと物足りない」。
どうも、折角の仕掛けが中途半端に終わっているような気がして仕方ない。この家に残っていた6人の子供たちの幽霊はいったい何だったのか? そし7人揃ったところで何が起ころうとしていたのか? ジャンカルロ・ジャンニーニ演じる祖父の本当の狙いは何だったのか? 老建築家を地下道で襲ったのは誰? 古い写真から抜け出したのは何物なんだろう? などなど、途中で打ち捨てられていく仕掛けが多く、その全てが謎に包まれたままだ。
本来、これらのピースが最後にピタッと一所に収まってこそ「良く出来たお話し」であって、この映画の現状のままなら「伏線」でも在りえず、様々なエピソードが混在しているに過ぎない(と思う)。
ここは「シャイニング」のように、父と家族とに焦点を絞って、父への愛情と恐怖心の板挟みというレジーナの心理描写をきめ細かく描いた方が良かったと思う。
老建築家の使い方ももったいない。しかし、このじいさん、雨の中、蛇の目をさして家を見つめていたらヘンタイかストーカーだよな、普通。

背筋が凍りつくような恐怖感はありません。これだけ無駄なエピソードが多いと各々に対する集中力が散漫になってしまう。
これなら「ゴースト・シップ」の方が面白かったな。ただレジーナ演じるアナン・パキンがちょっとチャーミングだったのが救いでしょうか。
すでに梅田地区での上映は終了しています。興味をお持ちの方はビデオかDVD化されるのをお待ちください。

おしまい。