「百貨店大百科」

デパート再生に賭ける


  

三寒四温とはよく言ったもので、寒い日もあるけれど日中はずいぶん暖かい日もある。それでもなかなかコートやマフラーが手放せないけどね。
九条のシネ・ヌーヴォでは「バルニーのちょっとした心配事」のロードショウ公開に併せて、この映画に出演している俳優さんの出演作を集めた「バルニーとその仲間たち」という特集上映を行っている。連日、モーニングとレイト、ほぼ日替わりの上映なので事前に番組をインターネットなどでチェックしてくださいね。
この日、ボクが観たのはバルニー演ずるファブリス・ルキーニが主演している「百貨店大百科」92年のフランス映画。

10年以上も前に撮られた映画だとはとても思えない題材を扱っている。この映画のエピソードをそのまま今の日本に持ってきても一本の映画になります。
この映画はコメディなのかなぁ、観ていて何だかボクは切なくなってしまいました。
まずまずのオススメ。次回はいつ上映されるのかはわからないけれど、チャンスがあればご覧になっても損はありません(特にかわいい女性が登場するわけではないけれどね)。

パリの目抜き通りに鎮座する由緒ある歴史を誇る老舗百貨店「グラン・ギャラリー」。歴史や風格はともかく、最近の業績はさっぱり。オーナー一族はこのデパートを再建するか売却するか悩んでいた。そこに登場するのがファブリス・ルキーニ演じるやり手の「建て直し屋」。彼は「この店を一年で収益が出る体制にする」と宣言し店長(社長だったかな?)に就任する。

この映画に登場するのは一癖も二癖もある個性的な人間ばかり。さまざまな売場にさまざまな店員がいる。そんな人々が織りなす群像劇なんですね。最初は皆ながばらばらの方向を向いて仕事をしていたのが、新社長の手腕もあって最後には一つの方向に向く。そして業績も回復してくるのだけれど...。

それにしても、パリの百貨店というのも凄いね。高級女性服を売っているかと思えば、ペンキや大工道具まで売っている。売場のレイアウトを換えるよりも扱う商品を絞る方がずっと効率的だと思うけどね。それに、新社長が来る前の店内のスケッチが恐ろしい、店員たちはおしゃべりに忙しく、お客のことなんかかまっちゃいないし、売る気なんかコレぽっちも無くて、まぁほんとにお客さんの方が「買わせていただく」って感じ(大昔の中国の友誼商店のようだ)。
ルキーニはそんなお店の改革に着手する。様々なセミナーや社員教育・研修を行う。バンジージャンプにどんな意味があるのか不明だけどね。自らも講演方法の研究に余念がない。バラバラだった心が一つになりかけるんだけど、一筋縄では行かない、さすが個性の国フランス。いろんな摩擦や軋轢があちこちで発生する。
さりげなく、でも的確に人物が描かれていることに好感が持てるし、だからこそ観ていて納得が行く。これだけの登場人物を実に見事に描き分けている(脚本がいいんだろう)。

仮装大会やファッションショー、マラソン大会への出場など、グラン・ギャラリーにも活気が戻ってくる。そして、今日は社員コーラスの発表会の日。
今までハーモニーを奏でるなんて考えられなかった人たちが美しく調和する...。
その歌声を聞くルキーニの切なさは...。

おしまい。