「めぐり逢う大地」

運命とは、宿命とは...


  

壮大な歴史物語り。
「運命」とか「宿命」という言葉が似合う作品。こういう重厚な映画を観るのは久しぶりのような気がします。

時は1867年、カリフォルニア州のシェラネバダ山脈のなかにぽつんと存在する小さな町「キンギダム・カム」が舞台。ゴールド・ラッシュに沸く西部にあってこの町も一攫千金をもくろむ男たちと彼らの懐を当てにした女たちが集まっている。そして、このキングダム・カムを実質統治しているのがディロンという初老の男。彼はこの町で全てを手にしている。

冬を迎えたある日、この町は旅の一行を迎える。この一行は、新しくこの町に流れ着いた娼婦たちと、一組の母娘、そしてパシフィック鉄道の測量隊。
親類を訪ねてきたというエレーナとホープの母娘はすぐに町に唯一のホテルに部屋を取る。
ディロンや町の期待を一身に集める測量隊のリーダーはまだ若い青年ダルグリッシュ。この町に鉄道が通るかどうかで、この町の将来は大きく変わってしまう。
このキングダム・カム唯一の酒場でらつ腕をふるっている美しく逞しいルチアはディロンの情婦でもある。
新しく到着した3人とディロン、ルチアの5人が、運命に導かれるかのように時に激しく、時にしっとりと出会い、紡ぎあげる物語りが、この「めぐり逢う大地」。

圧倒的な大自然を前にして、人間の営みとはなんてちっぽけなもんなんだろう、そんなことを感じさせる一方で、人間にとって一番大切なのはカネや名誉や地位ではなく、心であり愛なのかもしれないと思わせる(どちらか一つだけでも手にするのは難しいけれどね)。
今からおよそ140年前だって、人間のしていることはちっとも変わっていないんだなぁ。
冬場を舞台にしているのが正解。しかし、なんとも厳しい環境だ。すべて手作り、みんな生きていく、金を掘ることに必死で、その他のことには構っちゃいられないのが、画面を通じて良く良くわかる。こんな「恋は盲目」ならぬ「金は盲目」なんですね。

そんな町で繰る広げられる人間模様。過ぎ去った過去は償えるものなんだろうか? 
金やカネに執着してきた男、そして夢や理想に燃える男。この対比がこの映画のテーマなのかもしれない。鉄道によってディロンが築いてきた王国は音を立てて崩れようとしている。時の流れ、そして新しい技術のなんと非情なことか...。

原作はトマス・ハーディが書いた小説だそうです。読んでみたくなりました。
3/21(金)まで朝10時からのモーニング・ショウのみで上映しています。
初日に行きましたが50〜60名ほどと、そこそこの入り。
アクションでもコメディでもない人間ドラマ。まずまずのおすすめです。

おしまい。