「草ぶきの学校」

子供時代の想い出をスケッチする


  

このところ続々と(中国)大陸の映画も公開される。嬉しいな。この日も「北京ヴァイオリン」「中国の小さなお針子」の予告編が流れていた。香港の映画もいいけど、大陸の映画にはまた違った良さがある。これからもどんどん上映していただきたいですね。
この「草ぶきの学校」は岩波ホールで上映されている作品。大阪で公開されるのを楽しみにしていた。だから敢えて、この作品の情報には触れないようにしていたほど。でも、洩れて来る話だとなかなかいいらしい、期待を膨らませて...。

1960年代の江南地方、その川(湖?)べりにある小学校・油麻地小学がこの物語りの舞台。この学校の校長先生の息子・サンサンが主人公。彼の視線を通して、この学校で起こる様々な出来事がスケッチされる。語りはサンサンが昔を振り返るという手法だ。

ある日、おばあさんに手を引かれた紙月(ジーユエ)という少女が校長を訪ねて来るところからお話しは始まる。なにやら訳ありで、地元の学校に通えない紙月は、おばあさんの知り合いのである校長を頼って油麻地に来た。サンサンのお父さんは、深い訳も聞かずに彼女の受け入れを決めてしまう。
サンサンと同じクラスになった紙月。他の子供たちと違い、どこか垢抜けてか弱そうな紙月の存在がサンサンは気になって仕方がない。このサンサンの心の揺れこそ、自分では意識すらしていない淡い「初恋」だったんでしょうか?
この紙月が登場するエピソードに始まり、幾つもの出来事が次々と語られる。担任の先生の恋の仲立ち、優等生・杜小康(トゥシャオカン)との軋轢や友情、彼の家の没落、火遊びをして火事にを出してしまったこと、学芸会や体操会の想い出、語られるどのエピソードも自分の過去とどこか重なって、程度の違いこそあれ誰でも胸がキュンとなることでしょう。それになんと言っても江南地方の水辺の景色がどれも素晴らしい。郷愁を感ぜずにはおれません。
傑作なのは、父の不倫騒動でしょうか。何かと紙月の世話を焼く校長先生に対して、誰が言い出したのかやっかみ半分に「紙月は校長先生の隠し子だ」と噂が立つ。それを耳にした奥さんが泣き出して騒ぐから、校長先生も手がつけられない。
各エピソードは、まだ幼いサンサンの視線で語られているので、当時の彼に理解できなかった難しい箇所がすっぱり省かれているのが潔い。紙月とお父さんの関係は? 担任の先生の恋はどうして成就しなかったのか? シャオカンの家はどうして没落してしまったのか? 陸鶴にはなぜ髪の毛が無いのか? などなど...。

ボクの一番のお気に入りは、最後のラスト前で、屋根に登ったサンサンが出席を取るシーンだ。この絵を観ているだけで、なんか優しい気分になれました。

でも、正直言ってボクにはもう一つでした。ちょっと期待が大きすぎたからかなぁ。
各エピソードが、おもちゃ箱のようにばらばらに押し込められていて、少しずつは関係しているんだけど、あまりにもまとまりが無い。サンサンの病気だってなんか盛り上がらない。何か太い柱があって、それに派生して各エピソードが存在しているならともかく、大人になったサンサンが過去を振り返って「あんなこともあったな、こんなこともあったな」って思い出したことを、脈絡もなく次々に映像化したに過ぎないと思う。そんな様々なことがあり「どう」したんだ。それを語ってくれないと、ボクとしてはサンサンに感動はできないよ。
「そうやったんか!」と最後に膝を打つような仕掛け(感動)が欲しかったな。
ちょっともったいないような気がします。

それでも、決して面白くない映画ではありません。サンサンの姿にそれぞれの人が自分をダブらせ、うんうんと頷かれることでしょう。サンサンを演じている子役の演技は凄いですよ。
梅田ガーデンシネマでのレギュラーでの上映は、わずか一週間で終了してしまいました。3/13までモーニングショウでの上映です。
ボクが観た木曜の最終回は、10名ちょっとと何だか淋しい入りでした。

おしまい。