「二重スパイ/Dobule Agent」

あれっ、どうしたんだ?


  

韓国国内のみならず、日本でも有名な韓国人の大スター、ハンソッキュウが主演の新作映画は「二重スパイ/Dobule Agent」。日本でも大ヒットした「シュリ」、シムウナさまと共演した「Tell Me Something」以来の出演。前評判もなかなかいいと聞いていた。
しかし、封切りから3週間過ぎて4度目の週末にあたるこの日はMega Boxでの上映は3回だけ。しかも150人ほどしか入れないここでも小さい方のスクリーン。上映開始時間になっても30人も入っていない。後の回も「売切れ」にはならなかった。

映画の後で韓国人の知り合いに聞いたところによると、韓国国内では公開前からあんまり評判は良くなくて、実際お客さんの入りもイマイチらしい。「ブルー」でも思ったんだけど、軍隊モノとか北関係を扱ったモノは今ちょっと時期を外しているのかな。そんな印象を強く持ちました。この知人も「ちょっと続きすぎて飽きちゃった」と言っていた。
ハンソッキュウ、コソヨンのマキシムコンビをもってしてもこの結果だもんなぁ。この初夏にも日本での公開が決まっているんだけど、日本での興行成績はどうなるのでしょうか? 東映も貧乏くじ引いちゃったのかな?
マキシム(日本でも売っているインスタントコーヒー)と言えば、以前はシムウナさまもこのCMに登場していた。それが、今ではイミヨン。そりゃないやろって気がするけどね。イミヨンは冷蔵庫のCMにも出ているらしい(シムウナさまも冷蔵庫のCMにも出ていた)。この人、鼻がいかん、そう言っていたら、韓国人も笑いながら頷いていました。

さて「二重スパイ」のお話し(ボクは邦題には「ダブル・スパイ」がイイと思うんだけどな)。
正直に言うと、正しい評価が出来るほど理解できなかった。なんとなくは分かっているんだけど、ちゃんとストーリーが理解出来ているのか自信が無い。それほど難しいストーリーでは無いはずなんだけど...。
冒頭のピョンヤンでの軍事パレードのシーンはなかなか強烈。こんな映像流していいのか、と心配になる。そして、その一群を率いて行進しているのがハンソッキュウその人だ(もちろん合成だけど)。
そして、時は流れてリムビョンホ(ハンソキュウ)は当時の東ベルリンから西側へ亡命する。この亡命の裏側には彼の秘めたる使命が隠されていた。
ソウルでの事情聴取とも拷問とも受け取れる取調べを経て、リムビョンホは韓国の諜報部隊の一員となる。直接諜報活動に係わるのではなく、諜報要員の育成担当の教官を経て後方支援を担当するようになる。
そんな彼に北の諜報部員が接触を図る。その方法はラジオ番組(なんかゴルゴ13みたい!)。クラシック音楽を掛けるリクエスト番組の合間に読まれる葉書に暗号が隠されていた(んだと思う)。そして、その番組を担当するアナウンサー、ユンスミ(コソヨン)こそ北のスパイだった。
ある時から急に諜報活動が上手く行かなくなり、北へ送り込むスパイ船がピンポイントで爆破(?)されたり、不可解な失敗が続く。諜報担当の部長は内部に通報者がいると睨んだのだが...。

この映画には「心の葛藤が無い」と感じた。
語学力の問題で理解できなかっただけなのかもしれないけれど、リムビョンホが悩み苦しんでいるようにはあんまり見えなかった。と言うよりも、彼には韓国で失うものが無さ過ぎる。このミッションに失敗したとしても、彼が失うのは自分の命だけなのだ。命が軽いとは言わないけれど、もっと何か大切なものを韓国に作っておかないとストーリーに必然性や盛り上がりが欠けてしまう。その何かはユンスミなのか、部長との信頼関係なのか? これではなかなか説得力がないなぁ。
だから観ていて何か釈然としないし、イマイチ盛り上がらない。二つの国の間で翻弄され、悩みに悩んで苦しみぬいて、そしてリムビョンホはどちらを選ぶのか、と言うのが最大のヤマ場になるはずだと思うんだけど...。そこの部分がこの映画には欠けている。
リムビョンホとユンスミが亡命を果たし、南アメリカのどこかで幸せに暮らしているなんて、もう完全に蛇足。

脚本が悪いのかなぁ。
まぁ、字幕付きで観たら全く違う印象になるかもしれないけどね。
リムビョンホの上司役の諜報担当部長を演じているチョンホジンという役者さんなかなかいいですよ、ご注目ください!

さて、次回は「猟奇的な彼女」のクァクチェヨン監督の新作「クラシック/Classic」をご紹介します。

おしまい。