「チベットの女/イシの生涯」

チベットの自然の美しさに息を飲む


  

ちょっと変わった中国映画だ。大陸制作の作品だが、冒頭と最後にちらっと普通話が出てくるだけで、後のセリフは(おそらく)チベット語。
今の中国ではチベットと新彊ウイグルはちょっとタブー視されている中でこんな映画が出てきたのは凄い。
ストーリーとは関係なく、見事に映し出されるラサの聖地ポタラ宮殿。その他チベットの壮大で思わず息を飲んでしまいそうな美しさを見せる大自然にほれぼれする。あぁ、今すぐにでもチベットに行ってみたい。そんな気にさせられる圧倒的な美しさ。
こんな自然を前にすると、人間の営みとはなんとちっぽけなモノなのか思い知らされます(いっそうのこと、ドキュメンタリー映画にしてくれても良かったのにと思ったほどだ)。
しかし、アメリカや台湾で作られたわけではなく、やっぱり大陸で作られたこの映画には中国にとって都合のいい部分だけが背景に語られているような気がして仕方がない。領主さまから解放された農奴たちは借金を棒引きにされて今までとは比較にならないような生活が送れるようになった、なんてほんととって付けたようなエピソードだ。きっと制作側も検閲を通すのに随分苦労をしたんやろなぁ。
まぁ、そんなことはさておき...。

イシというチベット人の女性の半生を振り返る大河ドラマ。
考えてみたらチベットという地域はこの60年ほどで、一気に200年分ほど変わってしまったんだろうなぁ、そんな激動の時代を生きてきたイシも時代に翻弄されてきたのが良くわかる。
しかし、この映画が伝えたかったのは、どんな時代にも変わらない夫婦の愛情ではないだろうか。どんな形であっても一度結ばれた愛は、どんなに距離があっても変わらない不変のものなのだ(ほんまか?)。
イシが貫いた愛の重さ、深さ、硬さが、イシの孫娘のエピソードと対比されて「それが時代」とはわかっていながらも象徴されています。

イデオロギーに関係なく、ストーリーを追わなくても、随所に出てくるチベットの美しさを見るだけでも値打ちがあります。
ちなみに、普通の日本人がツアー以外でチベットに行くのは難しいです。昨年から関空〜成都を結ぶ中国西南航空の直行便が就航しているので、ラサを含むツアーも増えているはずです。お金とお時間がある方は是非どうぞ!
2/14までレギュラー上映、2/15〜21はモーニングショウで十三の第七藝術劇場で上映中です。

おしまい。