「アパートの鍵貸します」

ちっとも古臭さを感じない、最高の恋愛映画


  

この映画を再び映画館で観ることが出来るなんて思ってもみなかった。
初めて観たのはもう20年も前のことだ。今は空き地になっているけど、今ジュンク堂の大阪本店があるアバンザの南側に毎日ホールがあってそのビルの7階だったか8階だったかに毎日文化ホールという小さなホールがあり、そこで大毎地下のオマケのような上映会が開かれていた。そこで二本立てで観た(もう一本は「恋人よ帰れ!我が胸に」だった)。
もう、シャーリー・マクレーンのかわいさにすっかり心を奪われてしまったのを覚えている。オードリ・ヘップバーンがあれほどもてはやされて、何故彼女(シャーリー・マクレーン)がそんなに人気がないのか不思議だった(今でもそうだけど)。彼女には心を奪われたのではなく、恋をしてしまった。
また、大人になって行きつけのバーが出来たら、カウンターにオリーブの実を並べようと思ったもんです。
1960年に作られたモノクロの映画だけど、今観ても全く色褪せることなく、古臭さも感じさせない。それどころかスマートささえ感じてしまう。ほんとにいい映画です。ジャック・レモンももちろんいいんだなぁ。

ニューヨークの大手保険会社に勤めるCCバクスターは独身の平社員。彼はオフィスからそう遠くないアパートに住んでいたが、その部屋を課長連中に貸していた。課長たちは束の間の浮気を楽しむベッドを提供してくれるバクスターを重宝していたのだ。バクスターはエレベーターガールのフラン・キューブリック(シャーリー・マクレーン)に一方的な想いを寄せていたのだが、なかなか口説けない。
そんな時、バクスターは人事部の重役に呼び出される。「君は社内で人気者のようだけど、どういう理由だ?」シラを切るバクスターだが、重役の方が一枚上手。昇進を餌に自分にも部屋を提供しろと迫る。そんなお陰でバクスターは翌週から課長補佐に栄転。
しかし、クリスマスイブにひょんなことからその重役の逢瀬の相手がフランだとわかってしまう。ひどく傷ついたバクスターは酒場で一人マティーニの杯を重ねる...。

そんなストーリーは今でも充分通用するし、出てくる小道具がどれもこれも憎らしいほどお洒落で決まっている。40年前の田舎っぺたちは、この映画を観てニューヨークに憧れたんだろうなぁ。
「ホワイトカラーは今にコンピューターに仕事を奪われるょ」なんてセリフは、そのままズバリ当たっている。最近、デパートでもエレベーターガールは少なくなった(レッドデータブックに記載してもらいたいね)。バクスターのデスクに鎮座している超大型電子計算機は見ものだし、ダイヤル式の黒電話にロデックスの回転式電話帖。オフィスにはコートを掛けるハンガーがずらりと並びその横には紳士用の帽子を置く棚が並んでいる。バクスターはアイビーリーガーだけあって、ボタンダウンのシャツに細身のネクタイ。シングルの段返三つボタンのダークスーツも決まっているし、役職が上がればスーツの仕立てに余裕があるのがちょっとかっこいい。
アナログのLPレコードに、テレビディナーを暖めるのは電子レンジでチンではなく、マッチで着火するオーブン。台所にあるテニスラケットの使い道は?
なんとも、この40数年でここまで変わったのか。しかしそれでも変わらないのが男女の仲なんだねぇ。
フランが取り出したコンパクトを覗き込むバクスター。そのコンパクトの鏡は割れている「この鏡割れているね」「いいの、今の私の気持ちそのままだから」

洒落た小道具に、一癖も二癖もある脇役たち。
そして、決して目を向くほどの美人ではないが、小悪魔的な魅力を存分に発揮するシャーリー・マクレーンのかわいいいこと!
ひやっとさせられ、ほろっとして、そして最後にはにやっとしてしまう。
もちろん、毒にも薬にもならないお話しなんだけど、楽しい思いをさせてくれる。そして、誰かに勧めたくなる、そんな素敵な映画です。
もう二重丸のオススメです。

2/21までシネ・リーブル梅田でモーニングショウのみで上映中。その後、三宮のシネ・リーブル神戸でも上映の予定があるようです。お時間があれば是非ご覧ください。
そしてうっとりといい夢を見ていただきたいですね。もちろん、ビデオもありますが、この映画をスクリーンで観るチャンスは今後もそうそう恵まれないと思いますので、是非大きなスクリーンでご覧下さいね!
祝日のせいもあってでしょうか、場内は七分ほどの入り。ガラガラだと思っていただけにちょっとびっくりしました。皆さんお目が高い!

おしまい。