「壬生義士伝」

おもさげなござんす


  

「たそがれ清兵衛」に続いて松竹の時代劇が元気だ。「たそがれ〜」は昨年の映画賞を総なめにする勢い。この「壬生〜」も興行成績はなかなかいいらしい。
中井貴一と佐藤浩一が主演、その他三宅裕二、中谷美紀、夏川結衣など。
今回ボクが特に気に入ったのは、中井貴一の恋女房役の夏川結衣。以前も何かで目にしたことがあったかもしれないが、今回の映画ではピカ一の輝き。どことなくシムウナさまを彷彿させるような面影は、ボクの琴線をかき鳴らす。いいなぁ。一目ぼれです、ハイ。

このお話しは着眼点がいい。
今までボクが知っている新撰組の常識を覆す設定。土方でも近藤、沖田でもなく無名の一隊士を主役に立てる。未知の人だけに創作の幅が広がっているのがいい。史実に残っていない人物だけに自由に活躍させることが出来る。この新しい人間像をボクたちも素直に受け止めることが出来る。
だから、出だしの入門試験(?)の場面から、すっと映画の世界に入りこむことが出来る。これが大切だ。
そして何事に対しても斜に構える斎藤がまたいい。純朴な中井貴一、ひねた佐藤浩一。これはキャスティングの成功だ。着物が似合って立ち回りが決まる、そんな二人に拍手!

しかし、ボクはこの映画の終わり方がどうも腑に落ちない。
最後の20分ほどは、どうも蛇足に思えて仕方ない。吉村寛一郎は煙り立つ伏見の街角で両手に刀を持ち官軍に向かって走りこんでいく。あのシーンで終わればよかった。
三宅裕二との邂逅は最後の突撃の前に済ませておけばいい。食糧の援助を請いに行き、表向きは断るが後で佐助のお結びを差し入れさせることで事済んだはず。
延々と続く蛇足のせいで、感動も涙も薄れてしまう。惜しい。
それと吉村寛一郎が貫く「義」とは何なのか、ちょっと見えてこなかったのが残念。脱藩、新撰組入隊、そして南部藩大阪屋敷ではどうも筋が通らない。これを説明するには「義」ではなく、家族への「愛」を全面に出さなければ(「愛」が全面出れば、最後は突撃ではなく、逃亡でも良かったのにね)。
まぁ、それは欲を出せばの話しであって、全体的にみればなかなかよく出来た映画。お客さんの入りがいいのも頷ける。

町医者の待合室で吉村寛一郎の写真を見かけた斎藤(佐藤浩一)が遠く過ぎ去った過去を回想するという手法もなかなかいい。
名前は確認できなかったけど、三宅裕二の側用人佐助さんがいい味だしてますね。また、三宅裕二の息子役(子役)の伊藤淳史はいいねぇ、前から思っていたけど、この子(と言っても高校生ぐらいだと思うけど)いい役者さんになるような気がします。

まずまずのおすすめ。もう暫くは全国の松竹系映画館で上映していると思います。
この映画を観て流す涙と「たそがれ〜」の涙とは、少し違うと思うけどね。

おしまい。