「西洋鏡/映画の夜明け」

中国映画らしくない


  

今回ご紹介するのは「西洋鏡」という映画。
清朝末の北京が舞台。西洋人(英国人)が一人出てくるだけで、あとは全員中国人。なのに「中国の映画を観た」って気は全然しない。むしろハリウッドの映画を観ているような印象を受けた。それはセリフの多くが英語だったからではないような気がするんだけど...。
主演は「太陽の少年」で主役を演じていた夏雨(シアユイ)。当時の面影そのままで青年に成長したんだね(懐かしい!)。「古井戸」で喜鳳を演じていた女優さんも出ています。ヒロインのシンユイフェイは初めて見るような...。夏雨が勤める写真館の老板が中井貴一に見えて仕方なかったのはボクだけでしょうか?

写真を撮られると魂を抜かれる、なんて噂がまことしやかに囁かれていた時代。北京で、写真館の撮影技師をしているリウ(シアユイ)。何かにつけ新しい技術や機械が好きで仕方ない。そんな彼が目にしたのが「西洋鏡(活動写真)」。英国人のレイモンドが持ち込んできたのだ。リウは写真が動くなんて信じられなかったが、西洋鏡を見た瞬間から、この新しい技術(?)に心を奪われてしまった。写真館の仕事をそっちのけでレイモンドの小屋に入り浸っていた。やがて、リウは、大きく変貌しようとしている北京の街並みと北京の人々の姿を西洋鏡で保存することに意義を感じ始める。

今でこそ、写真を見たり、TVを見たり、そして当たり前のように映画を観る(そうそう最近ではフィルムを使わないデジタル方式の映画の上映もナビオやブルク7では始まっている)。だけど、初めて動く写真「活動写真」を見た人は、度肝を抜かれたに違いない。そんな素直な驚きがこの映画には一杯詰まっている。そして、最初は無声だった活動写真が、やがて音が入りだす予兆までを感じさせてくれる。
画面の奥から蒸気機関車が走って来たら、誰もがびっくりしてその機関車を避けようと身を翻すのがいいなぁ。

夏雨が好演している。先日、ヌーヴォで「太陽の少年」の予告編を観て、この夏雨どうしたのかなと思っていたところだったので、凄いタイミング。
どうして、この映画が中国映画らしくないのかちょっと考えた。理由はいろいろあるだろうけれど、一番大きいのは「清潔感」のような気がする。お金持ち連中はもちろん、庶民や使用人に至るまでみんなすごく小奇麗で清潔。着ている服も顔も手も。これって中国らしくないよね。もう一つは食事のシーンが一つもないことかな。中井貴一がリウを食事に誘うエピソードはあるけど、実際に食事が出て来はしない。これも中国映画らしくないよね。

サブタイトルに「映画の夜明け」と付いているけれど、まぁ、そんなに堅いお話しでもないし、軽い気持ちでご覧いただくのにはいいんじゃないでしょうか。感動するとか、余韻が残るとかそんなタイプの作品ではありません。
お時間があれば覗いてみて下さい、1/18(土)から梅田では三番街シネマで公開されます。こんな公開間際の試写会も珍しいね。

おしまい。