「リーマン・ジョー」

サラリーマンは変身する!?


  

最近すっかり人気者のティム・アレン主演の作品。
この間、神戸で「クライム&ダイヤモンド」に出ていると思ったら今回は天六で出演中だ。この後も「ハリー・ポッターと秘密の部屋」にも第一作に引き続きスネイプ先生役(ボク自身は、ティム・アレンにこの役はちっとも似合っていないと思っているんだけど)で出演していますね。彼の一番のはまり役は「ギャラクシー・クエスト」の爬虫類のおっさんやと思うんやけどね。皆さんはいかがですか?

さて、今回のティム・アレンは冴えないサラリーマン役。彼がどれだけ冴えないのかは映画が始まるとすぐに分かります。
そんなサラリーマン(最近はサラリーマンのことを「リーマン」と呼ぶそうですね、知らなかった)ジョーが一人娘の目の前で、マッチョな後輩社員に駐車場を巡るトラブルでノックアウトされてしまうことからこのお話しは始まる。訴訟社会のアメリカでなくても、普通、社内で暴力沙汰を起こしたら会社から解雇されると思うけど、何故かこのマッチョは謹慎だけの処分。一方、ジョーはこのショックで出社拒否になってしまい、自宅にこもる日々を送る。
そんなジョーを訪ねて来たのが社内の健康管理室の女性社員メグ(ジュリー・ボウエン、一見ナオミ・ワッツに似ている!)。落ち込んでいたジョーに対していろんなアドバイスを送るが、その中の一言がジョーを目覚めさせた。「あなたは何がしたいの?」

勤続10年を過ぎているが、社内ではどうもパッとしない。昇進も思うようにいかず、上司からの覚えも良くないし、社内に友人もいない。最近、奥さんには離婚され、一人娘とも週末に数時間会うだけ。こんなふうにちょっとも冴えず、しかも自分自身が人生に自信を持ってないジョー。
彼女の一言で「ほんとうに、ボクは何がしたいんだろう?」と考え始める。
そして思いつくのはただ一つ。「あのマッチョな後輩を叩きのめす!」
まず、会社に復帰したジョーは、メグにその意思を告げる。そして、マッチョ社員の自宅を訪れ、挑戦状を叩きつけるのだ。
社内ではたちまち、ジョー対マッチョの対戦で持ちきり。ジョーは元映画俳優のカラテ(これは空手ではなく「カラテ」だね)道場へ乗り込み「後三週間で強くしてくれ!」と師匠(なんとあのジョン・ベルーシの弟!)に頼み込む。

人生に明確な目的が出来たジョーは、もはや冴えないリーマンではなくなった。何がしたいか分かった今、周囲がジョーを観る目つきも変わり、やることなすこと上手く好転していくから不思議。
社内ではいろんな人から声を掛けられるようになり、上級職専用のクラブにも招待される。そして陰謀がらみだけど、いきなり部長職に昇進して、彼専用のフロアに秘書、そして駐車場。自分の目を開かせてくれたメグにもアタックしてデートに漕ぎ着ける。しかも、別れた奥さんは今になってようやくジョーの魅力に気が付く...。そして、仕事の合間にカラテ道場での修業は続く。

そしてマッチョな後輩が復職する日がやって来た!

こうやって書いてみると、正直言って、踏み込みが浅い映画であることは確か。なんかとんとん拍子にストーリーがご都合主義的に進んでいき、観ているこちらは素直に「頑張れ、ジョー!」と声を掛けにくい感じだ。
その原因の一つは、ジョーの駄目駄目振りをもう少し描かないと、復活してからの対比が成り立たないことだ。ほんとは仕事が出来ない訳ではないのに、もう一つ意欲がないのと、引っ込み思案な性格、そして運が無いから社内で埋没していることをもっとわかりやすいエピソードで伝えて欲しかった。
もう一つは、ジョーがマッチョな後輩社員に理不尽な暴力でノックアウトされるのではなく、もっと別の方法で目覚めさせて欲しかったな。暴力沙汰が原因なのはあまりにも唐突すぐて理解に苦しむよ。だからきなクエスッチョンを抱えながらのストーリーの進行になってしまう、と言うかムリが大きすぎるよ。
そんなボクの思いはともかく、映画は進んで行く...。

ジョーが偉いのは、もはやマッチョな後輩を「フィジカル的に叩きのめす必要は無い」と悟ったこと。やりたことに気付いたジョーは、ほんの数週間で自信が漲る「出来る」リーマンに変身していたのだ。だから、今更この後輩社員に暴力で勝つことの意味の無さを悟ってしまい、闘わずしてもっと大きなものを手にしてしまった(努力はちゃんとしたけどね)。人間って短期間にこうも変わってしまうものなんだなぁ。

同じ切り口でも、違う見せかたで随分違う映画になったんではないでしょうか。でも、映画そのものがシリアス路線ではなく、コメディだから今のまんまでも仕方ないか。
ジョーの一人娘ナタリーを演じるヘイデン・パネッティーア、なかなかかわいいですよ!
考えてみれば先日観たフランス映画「メルシィ人生」と同じようなストーリー。映画の面白いさとしては「メルシィ人生」に断然軍配が上がりますね(観くらべてみても面白いかも)。

平日の夜の部と言うこともあって、お客さんはほんのわずか。独特の味を持った映画館だけに、天六から映画館の灯を消さないように頑張ってもらいたいですね。
残念ながらこの映画の上映はすでに終了しています。興味を持たれた方はビデオかDVDになるまでお待ち下さい。
ティム・アレンにはポッターだけでなく、OS劇場で公開中の「サンタクロース・リターンズ」でも逢えますよ。

おしまい。