「エブリバディ・フェイマス!」

ラッキー・マヌエロ


  

愛しのサンフレッチェがJ2降格してしまったこととリフレッシュぼけですっかり頭の中が霞んでいる(いや、頭の中で「はこの次は何時香港へ行けるのか?」そんなことばかりを考えている)。
放心状態で職場復帰だ。休みの間に仕事は順調にはかどっていた(?)ようで、机の上にはfaxが山積み(ありがたいことです)。

今回ご紹介するのは九条のシネ・ヌーヴォで公開中のベルギー映画「エブリバディ・フェイマス」。あんまり期待せずに行ったのですが、その期待を大きく裏切る傑作。なかなかのオススメ作。簡単に内容をご紹介しましょう。

ガラス工場に勤める冴えないおっさんは、今年高校を卒業するかなり太目の一人娘がいる。このジャンは自分の娘には歌の才能があると思い込んで、各地で開かれるノド自慢に参加させているが、結果はあんまり良くない(というか全然駄目!)。一方、奥さんはマルヴァに普通の人生を歩んで欲しいと考えている。
そんなある日、ジャンの工場は突然倒産してしまい、工場は閉鎖されてしまう。彼はいきなり「失業者」になってしまったのだ。でも、ジャンは家族にはそのことを切り出せない。同じ境遇の若い同僚ウィリーと行きつけのパブで「工場を占拠してやる!」と管を巻いている始末だ。
ジャンのたった一つ夢は、一人娘をショウビジネスの世界で成功させることだった。どう贔屓目に見てもルックスは良くないマルヴァだが、優しい心を持ち、リラックスしているときには人を和ませる歌声の持ち主なのだ。どうにかして彼女を自分が作った歌(ジャンの趣味は作曲)で成功させたい、そんな思いで一杯なのだ。
八方塞がりの彼の前に、ひょんなことから千載一遇のチャンスが巡ってくる! 果たしてジャンはこのチャンスを掴むことに成功するのか?

書いてしまうと、なんとも言えないナンセンスなお話しなんだけれど、ところがどっこい。映画を観てると、腹をかかえて笑わせてくれて、そしてホロっとさせられる、そんな人情味溢れる「日本人好み」のつぼを押さえたコメディに仕上がっているのです。
主演のおっさんがいい味を出しているのはもちろんのこと、マルヴァや奥さん、若い同僚、人気歌手とそのマネージャー...。脇がみんな凄くいい(もちろん皆さん初めて見る人ばかりだけど)。ギスギスしたところが無くて、誰も傷つかない、とってもハートウォーミングなお話しに仕上がっています。
一見、人生投げやりに見える娘も、幼稚園でのボランティア(?)で人形劇を演じている姿は凄く前向きだし、歌も上手い。そして奥さんはいつも冷静な常識人だ。こんな細かい人物描写も丁寧で好感が持てます。
また、ヤリ手マネージャーの計算高い姿勢もなかなか上手に描かれています。

なんか「道端で色が付いている紙が落ちていると思って拾ってみたら、その紙が1,000円札だった」そんな感じの「めっけもん」の映画でした(残念ながら10,000円札とまではいかないけどね)。
シネ・ヌーヴォで今週一杯の上映。お時間があれば是非どうぞ!
一度観たら忘れられない作品になりますよ!

おしまい。