「五月八月/May & August」

子役の少女が素晴らしい!


  

今年2月以来の香港。今回は美食(?)と山歩きがメインで映画は2本観ただけ。
クリスマスに向けて公開予定の大作はまだ公開されておらず、上映されている映画の顔ぶれはちょっと寂しかった。しかも観た映画は、大陸(中国)と韓国の映画でした。
美食は、はっきり言っていまいちで、ガイドブックに載っているレストランよりも、人づてに聞いたお店のほうがいいな、と言うのが実感(まぁ、実感するほどたくさんのレストランに行ったわけではないけどね)。特に韓国料理のお店はひどくてちょっとショックでした。レストラン選びも難しいね。
山歩きの方は、二日連続で歩いてきました。もうこっちは十二分に堪能させてもらいましたよ。今まで知らなかった香港を再発見! 香港にもこんなすばらしいトレッキングコースがあるのかとビックリしました! 皆さんにも是非オススメしたいですね。
行きも帰りも飛行機はほぼ満席だったのに、香港の街では(山でももちろんだけど)ほとんど日本人に出会いませんでした。観光シーズンから外れていたり、あまり日本人が行かなさそうな場所ばっかりに行っていたせいもあるんでしょうけど、ボクが「Discover HongKong!」を楽しんでいる間に、日本人の香港観光ブームは去ってしまったのでしょうか? ちょっと残念、でも飛行機のチケットが取りやすくなっていいかもしれないね。

さて、映画のお話し。
会場はGH旺角。GHといのは「Golden Harvest」の略なんですね。KCRの旺角駅の真上に新しく出来たショッピングセンター(新世紀商場)にあるシネコン。まだ新しくてとても美しく、感じは神戸にあるシネ・リーブル神戸に似ています。
「五月八月」は何の予備知識も持たずに、MTRの階段なんかに貼ってあるポスターが目に止まり観ることにしました。そのポスターはボロをまとった幼い少女が二人並んでいる構図で、時代劇か解放前のお話しのようです。
館内は3分ほどの入り。平日の夕方だからこんなものかもしれません。

「ありゃー」って感じ。

簡単にストーリーをご紹介すると...。
南京に住む八月と五月は仲のいい姉妹。父親は学究肌の学校の教師。同じ家に母親と父の母(祖母)と暮らす5人家族だ。時は日中戦争のさなかで、彼女たちが住む街にも日本兵がやってきた。
日本兵の狼藉を目の当たりにした南京の市民は「ここにはもう住めない」と地方へと疎開を始める。妻も旦那に疎開を促すが、父は「疎開しても行く宛て先が無い」とこの街にとどまる。そんな家族が数日後に目にしたのは、疎開していった他の家族が逃げ帰って来る姿だった。街は包囲され、もうどこにも逃げられない。
街では日ごとに日本兵の狼藉が激しくなる。乏しくいなった食糧を得ようと街の中心地へ出かけていった父親は帰ってはこなかった。とうとう、家の中にまで日本兵が入ってきた。姉妹は屋根裏部屋へ隠れたが、母親は日本兵に陵辱され、祖母は殴り殺されてしまう。
母親は傷つきながらも姉妹の元へ戻ってきた。しかしその夜、まだ幼い五月が高熱を出し倒れてしまう。母親は父の男物のコートを着て街の薬房へ薬を貰いに行く。心配した八月はこっそりと母親の後を付いて行った。薬を受け取った二人は急いで家に戻ろうとするが、その姿を警戒中の日本兵に見つかってしまう。必死になって逃げる二人。しかし観念した母は八月をかばい、彼女に薬を持たせ「五月を頼む。あなたはお姉ちゃんなんだからしっかりしてね」と言い残して、兵士たちの気を引くようにして明るい場所へ出て行った...。
薬のおかげで五月の熱は下がったが、いくら待っても母は帰って来ない。
「お腹が空いた」とせがむ五月と街へ食べ物を探しに街へ出かけて行く二人...。

日本人であるボクには非常に苦しいストーリーだ。画面を観つづけるのが辛かった。こんな日本人ばかりではない、と中国の人たちに植え付けられていく日本兵(人)のステレオタイプに抗議のひとつもしたくなるが、この映画で紹介されているような日本兵(人)がいたのも事実だろう。
それにしてもお姉さんの八月を演じている子役がいい。けなげなのに凛として、かわいいけれどたくましい。そしてきつそうに一本筋が通った表情がいい。

物語りは後半に入り大きく変化する。そして、物語りは大きくトーンダウンしてしまうのが残念だ。
南京の孤児救援所で食事を支給される列に並んでいた二人は、通りかかった母の弟に呼び止められる。母の実家は揚子江沿いにある街の大富豪だった。この家に連れて来られた二人はそれなりに暮らし、学校へも通うようになるが、この街にも日本兵が迫ってくる。そしておじさんは死んでしまい、柱をなくしたおじさん一家はこの姉妹を置いて疎開してしまうのだ。
八月がこの街で出会ったのが、南京で一度すれ違った少年。少年は疎開の最中に父母を亡くし、一人でこの街の河原に住んでいたのだ。再び、孤児に戻った姉妹はこの少年と一緒に、父母にさよならを言うために南京の街へ、南京に行くのが無理ならばせめて南京とつながっている揚子江に行こうと歩き始める...。

このお話しは、最終的にはハッピーエンドに成り得ない。観ている側は彼女らの父母が死んでいるのは分かっているのだから。
でも、この終わり方はないやろう、って感じのエンディング。これでは、日本人のボクだけではなく、香港の人たちも共感しにくい。再び孤児になった二人と少年がどうやって苦難の道を歩みながらも生き残って行ったのか。それを見せないと(予感させるだけでもいい)ちょっとないようなぁ。他の孤児たちと一緒に、揚子江の流れに向かって「お父さん!お母さん!」と叫びながら涙しても何にもならないよ。

ボクにとっては確かに苦しい題材を扱った映画だったけど、題材と映画としての良し悪しは別だ。
後半のおじさんの家でのこの家族との軋轢などは、むしろ省いても良かった。八月がいかにしてこの困難な自分が置かれた立場を受け入れて、そして乗り越えて行くのかに焦点を絞って貰いたかった。

日本での公開はどうでしょう?  どこかの映画祭では上映されるかもしれませんが、劇場でのメジャー公開はどうでしょうね? この作品が何か賞を受賞すればわかりませんが、ちょっと難しいかな? ボクとしては八月を演じた少女の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいとは思いますが...。まぁ「鬼が来た!」も公開されたことだし、可能性は無くはないような気もします。

セリフは全て普通話(北京語)。例によって繁体字と英語の字幕付きでした。
公式web-siteはこちら(http://www.u333.com/films/mayaugust/)。

おしまい。