「隔籬位係古惑仔/My Boss My Hero/頭師父一体」

やっぱり韓国の映画はなかなか面白い


  

「五月八月」である意味打ちのめされてノックアウト寸前。そして、はしごした先は百老匯旺角(ブロードウェイモンコック)。ここは春先に来た時にもお邪魔したホテルに近い映画館。
この日(2002.11.29)に初日を迎えた韓国映画「頭父師一体」(韓国公開時につけてあるオリジナルの漢字を使ったタイトル)。英語のタイトルは「My Boss, My Hero」。そして香港公開時に付けられた漢字のタイトルは「隔籬位係古惑仔」。
映画館入り口にある告知スペースには、「猟奇的な彼女」と同じ系列の韓国発のコメディ映画、とうたっている。この映画に関してもほとんど事前の情報は持ち合わせておらず、MTRの駅や映画館に貼りだされているポスターのみを手掛りに観ることにしたのだ。ポスターの図柄は、主人公がグレーのブレザーの高校生の制服を着て笑っている、というもの。学園モノだとは容易に想像が付きますよね。
初日にもかかわらず、お客さんの入りは1/3以下。ちょっと淋しいね。

結論を先に申し上げると、かなり面白かった。いやぁ、韓国映画はいいよ。日本での公開が待たれる一本ですね(難しいかな?)。

では、例によって簡単にストーリーを紹介しましょう。
ソウルの裏社会で最近メキメキと頭角を表わしてきたドゥシク(チョンジュノ)。まだ若いが組織の中では「武闘派」で鳴らしている。ボスはドゥシクを気に入っているが、周囲はドゥシクのことをやっかみ半分に「僕らは皆大卒だけど、あいつは高校もろくに卒業していない成上がり者だ」と揶揄する。
そんな陰口を耳にしたドゥシクは高校に入りなおして卒業することを決意する。そして、試験なしで入学できる高校を手下に調べさせ、そこの三学年に編入するのだ。
30過ぎのヤクザの親分が、身分を隠して入った高校で、繰り広げる様々なチン事件が前半の山場になる。これらがなかなか面白いのよね。思わず身を乗り出して笑い転げてしまう。
そして、後半はこの高校の不正を暴くという、いささか構えたストーリーに移っていく。ここからが本来は面白くなるはずなんだけど、残念ながらコメディ映画としてはちょっとシリアスになりすぎてしまい、観ている側としては不完全燃焼に陥ってしまう(惜しいなぁ)。
でも、最後のオチはなかなかひねりが利いていていいよ。

机を並べて勉強することになった女子高生との淡い恋(これもオチがつくけど)。クラスを仕切るワルにイビられながらも、逆転する(まぁ、当然か)。そして、自分の手下と高校の女性教師(ソンソンミン)との恋(しかし、この先生お色気ムンムンで、男子生徒には地獄だね)、などなど面白いサイドストーリーには事欠きません。
一番面白いのは「チング」で一番情けない役を演じていた役者さんの役どころでしょうね。このチョンウンテク、「チング」の時とは一転してドゥシクの手下として大活躍、笑いを取ってくれます。この役はきっと「チング」を意識して振られたんでしょうね。もう一人の子分役の人も韓国映画ではよく顔を見かけるバイプレーヤーの方ですね(今回は準主役です)。「公共の敵」でナイフ使いの役で出ていたお兄ちゃんも顔を出しています。また、脈略も無く時折顔を出す露出狂の男、意味不明ながらなかなか面白い。

後半の学園紛争の結末はどうなるのか、ちょっと疑問ですが、それも「難癖をつければ」という程度でのことで、実際映画を観ている最中はあんまり気になりません。とにかく、単純に観ていて面白い。学園モノとヤクザモノ。その一見同じ映画には収まらないテーマを面白く融合させた作品と言えるでしょう。
もうすぐ日本でも公開される「猟奇的な彼女」ほどのパンチ力はありませんが、気楽に観て大いに楽しませてくれる映画であることは間違いありません。
音源はオリジナルママ、例によって繁体字の中国語と英語の字幕付き上映でした。

おしまい。