「わすれな歌」

新星現る!


  

翌日、湾岸線を飛ばして再び和泉佐野へ向かう。前日よりもう一つ寒いよ。
これまた、関西では公開前のタイの映画「わすれな歌」。この映画のタイトルは「わすれな草」だと思い込んでいて、この日「歌」だと気が付いた。「草」だと思っていたので、それならエリック・ツァンとニコラス・ツェー主演の香港映画と同じ題名なんやなぁ、と思っていた。
昨日の「ごめん」よりはちょっとだけ多い入り。それでもこの人数でこの会場では淋しいね。でも、この「わすれな歌」が終わってホールを出るとき、次の「木曜組曲」の開場を待つ人は100名以上並んでいたけどね(良かった)。

タイの映画もお目にかかることが多くなった。この偽ジェにも何本か登場している。もちろんタイ国内で評価が高い作品だけが輸入されているとは思うんやけど、観た作品はいずれもなかなか面白かった。
「わすれな歌」の監督は「6ix to nin9」の監督さん(ベンエーグ・ラッタナルアーン)だし、主演の男優は「怪盗ブラック・タイガー」にも準主役で出ていましたね(スバコン・ギッスワーン)。

この「わすれな歌」の目玉はなんと言っても主役のサダウを演じた女優さん(シリヤゴーン・ブッカウェート)ですね。どことなくシムウナさまを思い出させる清楚な顔立ちはボクの心の琴線をかき鳴らします。タイにもこんな美しい女優さんがいらっしゃったのね。そんな彼女が、幸せそうな恋人時代から薄幸の人妻役までをけなげに演じます。いいなぁ。彼女を観るためだけでもこの映画を観る価値がありますょ。
なんでも、監督はこの女優さんと一緒に仕事をするために、この映画の脚本を書いたとか...。その気持ちわかります、はい。
サービス精神旺盛で、様々なエピソードが散りばめられています。その割にサダウの登場時間は決して長くないんですけどね。それでも、要所要所にはきっちり顔を出してくれるからいいんです。

バンコクから遠く離れたある田舎。ペンは唄うことが好きな青年。一途なところがあって、川向に住むサダウに惚れると、猛烈にアタック。そして無事結ばれる。しかし、その幸せも長く続かない。彼女が身ごもったある日、ペンは徴兵されてしまうのだ。最初の半年は毎日毎日手紙をしたためるペン。サダウもペンからの手紙を読んでいるときだけ笑みが戻って来る。
そんなある日、ペンはふとポスターに目を留めてしまう。「掃き溜めからスターへ!」と記されたポスターには地元での歌謡大会に出場し、上位2名に残ればバンコクで歌手デビューできると書いてある。早速応募するペン。見事合格だ。兵舎を無断で逃げ出しバンコクへ行ってしまうペン。
しかし、バンコクでペンを待っていた生活は歌手とはほど遠いものだった。雑用に追いまわされてサダウへの手紙を書く時間すらままならない。
そして月日は流れる。音信が途切れたペンを心配したサダウはペンを訪ねてバンコクへやってきた。「ペンはもう有名になったの?」というサダウの質問に芸能事務所のおじさんは「行ってみればわかる」と今夜の興行場所を彼女に教える。
その晩開かれた歌謡ショウでも裏方の仕事を黙々とこなしていたペンにチャンスが訪れる。歌手の一人が出番をすっぽかし舞台に穴をあけたのだ。ピンチヒッターで急遽舞台に上がるペン。彼のノドはまだなまってはいなかった。観衆を魅了するペンの唄声は新たなスターの誕生を予感させるのに充分だった。そんなペンを客席から見守るサダウの目には涙が光っていた...。
このまま終わればメデタシ、メデタシなのだが、この晩ペンにはもう一つの転機が訪れ、舞台は暗転していく...。

この映画は、決して暗い映画ではないし、難しいお話しでもない。都会の華やかな芸能界にあこがれる一途な(向こう見ずな?)男と、そんな男と結婚してしまった田舎に住む控えめで美しい女の物語り。
映画の中で象徴的な小道具としてラジオと水色のブラウスが上手に使われています。

サダウ、ほんとにいいですよ。
この映画、来年の早春に新梅田シティのガーデンシネマで公開が予定されているそうです。かわいいサダウを是非映画館でご覧くださいね。

おしまい。