「ごめん」

待ってました!


  

11月に入ったとたんにもう秋は終わってしまったのか? すっかり真冬モードだ。
吹き付ける風は刺すように冷たく、降る雨も陰気。この冬も暖冬だと天気予報では言っていたのになぁ。

今回お邪魔したのは「いずみさの映画祭2002」。
和泉佐野市役所の横にどっかーんと建つ「いずみの森・大ホール」が会場。凄く立派なこのホールには素直に驚きました。2階部分も含めると軽く1,500人は収容できそう。シートは座りごこちがいいし、スクリーンも巨大だ。
この日は事情で会場到着が、上映開始時間ぎりぎりになってしまった。「座れるかなぁ」って心配していたほどだった。でも、ホールに入ってみると、この巨大な会場に100人も入っていない。
そりゃないよ!
去年の夏に公開されてボクのお気に入り映画の一本になった「非・バランス」。この映画を撮った富樫森監督の最新作で、しかも舞台は大阪(豊中・梅田・天保山)と京都(上賀茂神社とその周辺)。一般公開に先立っての上映(東京では既に公開中)とあって、ごっつい楽しみにしていた。確かに、大阪からの地の利は悪い場所だけど、ここまで観客数が少ないとは思っていなかった(しかも無料やのに!)。ショックや!
今回は、友人である釣師の奥さんとご子息の3人で観てきました(凄いメンバーだねぇ)。

さて、ここからは「ごめん」のお話し。
原作を前もって読んでいたから、ストーリーそのものは、ボクにとってそんな新鮮味はなかった。だけど繊細な子供心の機微を巧みに写す演出力はさすが。それに加えて主演している久野雅弘、櫻谷由貴花の二人がごっついいい(でも、一番芝居が上手いのはセイに片思いする同級生の女の子だけどね)。
中学や高校生の頃のお話しではなく、小学6年生が主人公。
映画を観ながら、遥かかなた昔の自分の想い出が(都合のいい部分だけ)よみがえってくる。子供の頃は人を好きになるって一途やった。後先のこととか損得とか余計なことは考えずに自分の気持ちに正直やったなぁ。そのことを考えてたら他のことは一切考えられなくて、思い込みが激しかった。それに引き替え、今はなぁ...。

一生に一度しかない「初恋」。 その相手が二つも年上の中学二年生でもいいやんか。自分の気持ちを素直に伝えて、当たって砕けろ!

そう、子供の頃って、ボクにでもお話しやドラマの主人公のような恋愛が出来ると、理由もなく信じていた。
好きな人が出来て、その子に打ち明けたらokで、次の日曜日には仲良く手をつないで宝塚ファミリーランドでデートする、なんてね。そうなるに違いないと確信していた(ような気がする)。
でも、現実は厳しいよ。なかなか好きな子は現れないし、現れたら現れたらでこの胸に秘めたる思いを打ち明けるなんて、恥ずかしくって出来るわけ無かった。ましてや、振られたらどうしよう、なんて考え出したら夜も寝られへん。

そう思うとセイ(主人公の男の子・久野雅弘)は立派や。漬物屋で見かけて、二三言交わしただけのナオ(櫻谷由貴花)に「一目惚れ」して、家まで押しかけてしまう。立派や。エライ! また、恥ずかしがらずに、そのセイの思いに正面から応えてやれるナオもいい。ちょっと意気地がなさそうなセイと、男勝りのナオのコンビは見ていてすがすがしいな。
「あんた、ストーカーちゃうやろな」
「いや、真面目な気持ちで付き合ってもらいたいと思てます」
そんな、何とも言えない、掛け合いがいいね。

セイが初稽古をしている体育館にナオが訪ねて来てくれる。セイは嬉しいはずやのに、お年玉代わりのプレゼントを渡そうとするナオに「そんなんもらえません。もう終わったことやのに」と啖呵を切ってしまう。
でも、そこから自分の本当の気持ちに素直な行動をとらせる脚本はさすが。やっぱり、自分の気持ちに素直にならんとあかんよな。

青春時代よりほんの少し前のこのお話し。男の子だったら誰もが経験したに違いないエピソードを巧みに織り交ぜて、甘酸っぱい以前の想い出として懐かしさを感じることでしょう。そして、自分が素直になれなかった分だけ、セイを応援したくなる。そんないい作品です。子供が観てももちろんいいでしょうが、本当は大人に観てもらいたい作品なのではないでしょうか(今まではこの年代を取り上げた映画で、大人向きの作品ってほとんどなかったもんね)。

大阪では11月16日(土)からテアトル梅田で堂々公開。初日と一週間目に主演の二人と富樫監督などの舞台挨拶も予定されているようです。是非、劇場へ足を運んでみてください。

おしまい。