「ディナー・ラッシュ」

NYの花形レストランの夜は更けて...


  

このタイトルの意味がわからなかったけれど、映画を観て理解できた。
とてもはやっているレストランの厨房では、お客さんがたて込んでくる夕食時には、それこそラッシュアワー並み、いや戦争並みの忙しさなのだ。

舞台はニューヨークにあるイタリアレストラン。ある晩の出来事を映し出した群像劇だ。
この手の手法は、去年だったかに観た「星降る夜のリストランテ」という映画もとっていた。「星降る...」は上品にまとめられていて思わずニヤっとしたり、ほっとしてしまう、どちらかというと暖かい雰囲気を醸し出していたのに対して、「ディナー...」の方はもっとどろっとした部分を前面に押し出した作品。これはローマとニューヨークの違いなんでしょうか。どちらとも良く出来た映画です。

幾つかのエピソードが併走して語られる。
このトライベッカにあるレストラン「ジジーノ」(実在するそうです、行ってみたい!)。昔からの家庭料理店にこだわるオーナーの父親と、腕も意欲も一流で息子のシェフ(ウード)との間で微妙に対立している。ウードはそろそろ親父には引退してもらい、この店のオーナーになりたいと考えている。
副料理長ダンカンはスゴ腕だが、私生活にだらしなくいつも遅刻してくるし、賭け中毒でノミ屋のマフィアへ多額の借金を抱えている。
マフィアの連中はこの店に目を付け、ダンカンの借金のこともあり、この店の乗っ取りを目論んで店に乗り込んでくる。

今夜もジジーノは満席だ。客席には若い芸術家を引き連れた画廊のオーナー、マフィアの二人組、市警の刑事夫妻、料理評論家の二人組、ウェイティング・バーに陣取る若いウォール・ストリートの勤め人、などなど。
店のスタッフも多士済々で細かい会話のなかからキャラクターが浮かび出てくる。
彼らが各々に語る物語が輻輳して迷走する。しかし、ラストには一転して、ニヤっと言うかなんと言うか、全てはこのラストのために仕組まれた伏線だったのかと納得してしまう。

この作品では階段がとても巧く使われているような気がします。もっとも、このジジーノには階段が多いだけなのかもしれないけどね。
もう少しは新梅田シティのガーデンシネマで公開しているようです。それともビデオになってからでも十分お楽しみいただけるでしょう。
今宵はイタリアレストランでディナーを楽しみたくなりますよ!

おしまい。