「セレンディピティ」

乙女ごころをくすぐる


  

ずいぶん前に何かの雑誌で紹介記事を読んだ。そして、最近どの映画のときか忘れたけれど予告編を観て「この映画は観よう」と思っていた。もうすぐOS劇場で公開だから前売りを買おうと思っていたら、試写会で拝見することができました。
感動するとか、思わず涙が頬を伝うという大作映画ではありません。気楽に観て、気楽に楽しめる、そんな作品です。皆さんにオススメってわけにはいきませんが、誰が観ても嫌悪感を覚えることなく、爽やかな気分で映画館を後に出来るのではないでしょうか。

「セレンディピティ」は「思いがけない幸運」って意味の単語だったと思うんだけど、映画はまさしくそのとおり!
でもね、たとえ「思いがけない幸運」に巡り合ったとしても、それを手にしてただ待っているだけではどうにもならないことを教えてくれるストーリーでもあります。

クリスマスを前にして、プレゼントを品定めする人々で込み合うニューヨークのデパートから物語りは始まる。ジョナサン(ジョン・キューザック)とサラ(ケイト・ベッキンセール)は一つしかない黒いカシミアの手袋を同時に手にする。お互いに譲り合う二人。
それをきっかけに、買い物のあとで「セレンディピティ3」というお洒落なカフェでお茶を飲む。お互いに引かれあっているのはわかっているんだけれど、サラは二人の恋の行方は運を天に任せようと提案する。
「もし、二人が運命の恋人だとすれば二人は再び出遭えるはず...」と。

その直後、忘れ物に気がついてカフェに戻り出遭う二人。スケートリンクでデートする二人の姿は微笑ましい(でも、スケートはちっとも上手くない)。
でも、こんなにすぐに再開するのでは足りないのか、サラは新たな提案をする。ジョナサンは$5紙幣に名前と電話番号を書く。サラは持っている本の表2対向(見返り)ページに名前と電話番号を書き、この本を明日古本屋に売り払う。そして、もし二人が結ばれる運命ならいつの日かこの紙幣がサラの手許に来るだろうし、ジョナサンはこの本を見つけることができるはず...。

いつしか数年が過ぎ、ジョナサンは今の恋人と婚約し、もうすぐ結婚式を迎える。すっかりサラのことは忘れたかに見えた彼だが、街角で古本の屋台を見かけると走り寄ってあの時サラが持っていた本の表紙を開いて確認してしまう。何年か前にほんの数時間を一緒に過ごした、あの時間が忘れられないのだ。
一方、サラはサンフランシスコに住み、ヘンテコなミュージシャンからの求婚を受ける。でも、彼女は彼に気持ちの整理をするために、この週末を一人で過ごしたいと彼に申し出る。すべてを打ち明けてある親友と「運命の恋人」と再会するためにニューヨークへ向かうサラ。
果たして二人は「運命の恋人」だったのか?

クラシックでお洒落なホテル、ウォルドーフ・アストリアのエレベーター。ブルーミングデールズのクセのある販売員。セントラルパークにあるというウォルマン・スケート・リンク。そしてクリスマスのイルミネーションが美しいニューヨークの街並み。
どれを取ってもうっとりするような美しい情景と楽しい仕掛けで一杯。
時にクスっと笑い、ほろっとしてしまう。まるで夢を見ているような作品です。特に最近沸点がどんどん下がっている人には、息抜きにオススメの映画ですよ。

サラが持っていた本、「コレラ時代の愛」(G・ガルシア=マルケス)が気になりますね。

おしまい。