「夜間飛行」

不思議な魅力が香る


  

サンフレはまたも勝てず。やばいよ、ほんまに!

十三にある第七藝術劇場。ここに来るのは半年前の大阪韓国映画祭以来。ここはこの9月から(だったかな?)、常設の映画館としてリフレッシュオープンしています。ロビーも綺麗になっている。
アメリカ村のパラダイスシネマの灯は消えてしまったし、年内に扇町のミュージアムスクエアも閉じることが決まっている。来年1月には京都の京都アサヒシネマまでも閉館してしまうという。七藝には是非頑張っていただきたいですね。応援しています!

観てきたのは香港映画の「夜間飛行」。
この「夜間飛行」というタイトル、「Midnight Fly」という香水の名前から取ったようです。どんな香りがする香水なんでしょう? 興味がありますね。
主演はアニタ・ムイと純名リサ。芸能オンチのボクには純名リサという人がどんな女優さんなのかこの映画を観るまで知らなかった(もとタカラヅカの人だったのね!)。
ほとんど予備知識を持たないまま、香港の映画というだけで七藝まで足を運んでしまったのだ。でも、この映画には香港はただの一シーンも登場しない。それどころか、前半部分は広東語のセリフさえも数えるほどしかない。そんな不思議な映画なのです。

面白い偶然からこの映画はスタートする。
南仏のプロヴァンスを観光するツアーバスに偶然乗り合わせたミッシェル(アニタ・ムイ)とミキ(純名リサ)。二人は反目しあっていたが、やがて打ち解け仲良くなる。ミッシェルは夫とこのツアーに参加するはずだったのだが、仕事に追われる旦那は参加できなくなり独りで来ている。結婚6年目を迎え、夫婦の間にはどこか冷たい隙間風が吹き始めていたのだ。
一方、ミキは男が結婚していることを知りながら3年間不倫を続けていて、身ごもってしまう。この旅から帰ったら子供を堕してしまおうと考えている。
意気投合した二人は、お互いの身の上を心配し、励まし合いながら旅を続ける。

ツアーは終わり一旦解散したが、その日のうちに再び街のカフェで出会った二人はモロッコへ出かけるのだ。
モロッコのホテルでくつろぐ二人。しかし、二人はそれぞれ違う理由から、まずミキの不倫相手が自分の夫であることを知り、続いて自分の男がミッシェルの夫だと知ってしまう。
ショックを受けた理沙は何も告げずにホテルから飛び出してしまう...。

「こんな偶然あるか?」って、思いながらも、ここまでは、不思議な巡り合わせというか、映画の世界ならあっても不思議ではないお話しだ。
しかし、この映画はここからクライマックスへ突入する。冬の暗いヨーロッパの石畳から、地中海を隔てただけで、明るく開放的でありながらどこか神秘的な異国情緒を醸し出すアフリカ、モロッコへ。
ストーリーが進むうちに、この映画のランディングポイントはどこなのかと頭を巡らせる。どこにどう落ち着こうとも、二人にとって双方がハッピーになる終わり方は考えられない。
そうこうしている間に、お話しは急展開を見せ、全く意外な方向へ進んで行くではないか!
そして、とうとう姿を見せないと思い込んでいたミッシェルの夫トンまでが登場する(この役者さん、サイモン・ヤム。「ザ・ミッション/非情の掟」の時とはまた違い、なかなかの存在感です。香港の役者さんというより大陸系のような気もしますけどね)。

お話しとしては釈然としないのだけど、不思議な観せる魅力を持った作品です。
もう暫くは上映しているはずです。ちょっと毛色の変わった香港作品ですので、アイドルや四天王が出る香港映画に飽きた方には持って来いの映画だと思います。特に女性陣におすすめなのでしょうか?
それにしても、ちょっと怖いけど、モロッコに行ってみたくなること間違い無しですよ。

おしまい。