「ホセ・リサール」

熱い人間ドラマ


  

いままでたくさんのアジアの映画を観てきたけど、フィリピンの作品を観るのは初めて。今回ご紹介するのは「ホセ・リサール」という三時間の超大作。
会場は梅田ガーデンシネマ。お客さんはボクを含めて7名とちょっと淋しいぞ!

フィリピンがスペインの植民地だったことさえ知らなかった(勉強不足です)。
そんな19世紀の終わりに、裕福な名家出身の若者ホセ・リサールは学問と芸術に秀でており、実家からの後押しもありスペインのマドリッド大学に進み医学を修める。更にフィリピンにおけるフィリピン人が被っている差別を糾弾すべく二冊の小説を出版する。
彼は平和的な手段での母国のスペインからの独立を望んでいたが、この小説に感化された独立を目指す過激派のゲリラ組織から崇拝され、スペインの統治当局から「反乱の首謀者」として逮捕され、処刑されてしまう。

そんなホセ・リサールが獄中で、自分の過去を回想するという手法でこの映画は進んでいく。
物語りは抑制されたペースで進んで行き、彼の何者にも流されない意志の強さがより強調される。劇的で派手な部分は極力抑え、人間ホセ・リサールが一体どんな独立を望んでいたのか考えさせられる。「スペイン人との平等な権利を得る」という理想のもとで、無血の独立をフィリピンが勝ち取っていたら、今とは違ったフィリピンになっていたのでしょうか?

この映画で描かれているスペイン人の聖職者たちの腐敗ぶりはすざまじい。それを知っていながら、フィリピンの人たちがキリスト教を捨てないところも凄い。宗教って難しいですね。
また、かつて日本が植民地支配していた国々でもよく似たことが起こっていたであろうことも想像に難くない。

ホセ・リサールの裁判で、彼の弁護人に指名された軍人さんが好演しています。

フィリピンの近代史に興味が無くても、一人の男の物語りとして充分楽しめる、中身が濃いドラマです。三時間があっと言う間に過ぎていきますよ!
残念ながら、梅田での上映は終了してしまいました。三宮のアサヒシネマでもうしばらく(8/2まで)公開中です。お時間に余裕があればどうぞ。

おしまい。