「天使の眼」 |
現代上海の恋愛多重唱 |
いっぷう変わった映画だ。
上海の映画館で座席案内係として働いている若い男ウー・ガンが主人公だ。彼は決して声は掛けないが、何人か知っている顔がある。いつも同じ席に座る男、同じ女とは決して来ない若い男...。ある日ウー・ガンは上映中のロビーで、劇場から出てきた知っている顔の若い女とすれ違う。そして、映画の物語はこの女の物語にスイッチされる。さらに、彼女が自宅の窓から見かけた、バスの後ろを追って走る体育教師にバトンが渡され、街を走るこの教師が追い抜いた古い地図を持つ謎の女にストーリーはつながり、この謎の女が歩いた道端でカセットテープを売っているのが真面目な大学生。いつしか舞台は大学のキャンパス(どうやら華東師範大学のようだ)へ切り替わる。不器用なこの男子学生が思いを寄せる女学生に告白する方法を練り上げて実行した結果は...。
この作品で描かれている若い恋人たちは、いずれも真剣に恋をしている。そこに好感が持てる。その一途なまでの真剣さゆえに笑いも誘われるのだ。
そしてウー・ガンがデートを約束した女性だけが、何時間待っても現れないのだ。彼の恋愛だけがリアリティさを持たない。でも、それは観ているこちら側には何のわだかまりも感じない。逆に目の前を通り過ぎていく若い恋人たちの恋愛が次々と成就していくことのほうに何か違和感を感じてしまう。
日本での公開はどうかな? 従来の大陸の作品にはないスマートさを感じますが、ちょっと難しいかな。雰囲気はは「人魚の涙」に似ているような気がしますが、それよりはずっと明るくて垢抜けしていると思いました。 おしまい。 |