「チキンライス・ウォー」

あぁ、中華圏へ行きたい!


  

続けて同じ会場で福岡アジア映画祭。移動しなくていいので楽チンでどんどん観ることができる反面、息抜きも出来ないし、トイレに行って、タバコを一本飲んでるうちに次の作品の上映が始まってしまう。せわしないと言うか、気分の入れ替えが出来ないと言うか、ご飯を食べる間もない、ちょっと贅沢な悩みですね。

シンガポールの映画は一昨年に3回も観た「フォーエバー・フィーバー」以来。この映画をとても気に入っているボクはこの「チキンライス・ウォー」もかなり期待していた。
結論から言うとなかなかいい映画だった。ちょっとパンチは不足だけどね。

チキンライスと言うと、ボクはケチャップ味で鶏肉が入った焼き飯のようなものを勝手に想像していたんだけど、考えてみると中国圏でそれはないよな。ここでは白いご飯に蒸したりローストしたチキンのぶつ切りがのっかている丼飯のようなモンですね。中国圏ではあちこちの屋台や食堂でよく見かけるメニューです(かしわの代わりに豚も多いけど)。
主演は「フォーエバー・フィーバー」でホックのライバルで金持ちの嫌味な青年を演じていた人ではないでしょうか(もし、違ったらごめんなさい)。ピエール・プンという名前です。この映画では一転して、気の弱い好青年・フェンソンを演じています。彼の実家は屋台村(?)で鶏飯屋を経営している。そしてヒロインはこれまたなかなかの中国系美人。大学でも一、二の人気を誇り、彼女の気を引こうとする男は枚挙の暇が無い。そんな彼女・オードリーの実家も屋台村で鶏飯屋をやっている。実は二人の店は隣り合わせにあり、両方とも大繁盛しているのだが、お互い同士はいがみ合っており、挨拶もしないどころか、口を開けば即けんかという「犬猿の仲」なのだ。

フェンソンは内向的で、同級生のオードリーに憧れているのだけど、声も掛けられないし、もちろん相手にもされていない。そんな彼にもようやくチャンスが回って来そうになる。それは大学のクラスで行うシェイクスピアの芝居「ロミオとジュリエット」。ジュリエット役はもちろんオードリー。ロミオは今オードリーと付き合っている彼氏が演じるはずなのだが、この男、ろくすっぽセリフも覚えられないのだ。ロミオ役を虎視眈々と狙うフェンソンは必死になってセリフを暗記する。
果たしてフェンソンはロミオ役を手に入れることができるのか。そして「ロミオとジュリエット」ばりにいがみ合う両家の娘と息子の恋は成就するのか。その一方で、鶏飯屋同士の争いは一層のエスカレートを見せていく。
おしまいはあまあまで、落ち着く線に落ち着いてしまうのですが、着想が良くて、なおかつシンガポールの観光地ではない庶民の生活(?)が垣間見られる点に好感が持てました。

途中で、オードリーがフェンソンにたなびくところが弱いかな。今のままだと、ティファニーのネックレスにころっといった物欲丸出しの馬鹿女にしかすぎへんよ。そして、両家のいがみ合いが二人の恋の行方にもう少し影響を与えないとお話しが盛り上がらない。そのへんをもうちょっと丁寧に描けばもっといい映画のなったんではないでしょうか(ちょっと偉そうやけど)。
二人の兄弟のエピソードや、鶏肉の卸業者、フェンソンのゲイ友人などサイドストーリーはとっても良く練られていて面白かった。

この映画を観ていて、シンガポールに行きたくなるのではなく「香港へ行きたい!」と切に思ったのはどうしてでしょうね。
なお、映画の中でゲストとしてシンガポール出身で台湾でも人気の女性ボーカリスト、ターニャ(蔡健雅)が一曲歌ってくれます。でもこの日この映画を観た人の何人がターニャのことを知っているのかな、ってちょっと気になりました。

おしまい。