「上海アニメーションの奇跡・Aプログラム」

中華世界にひたる


  

続けて渋谷のユーロスペースで観たのは、この日が初日の「上海アニメーションの奇跡・Aプログラム」。
「ステイト・オブ・ドッグス」を観終わるとロビーには一杯の人が待っている。70〜80名は入っていたか。何度かここで映画を観たけど、ロビー奥にあるスクリーン「ユーロスペース2」は初めて。どの席に座ろうかと少し迷ったが、最前列へ。でも、ここは最後列・スクリーン正面の席が一番観やすいのかもしれない。傾斜が緩くて、お客さんが多いときには、どの席でもあまり観やすくないかな。
なお、入口を入ってすぐ左手にある「ユーロスペース1」は最前列が特等席です。

さて、中国にある上海美術映画製作所が63年から88年のかけて創り出したアニメーション映画7作品を一挙公開するという企画が、この「上海アニメーションの奇跡」という上映会でAプログラムとBプログラムに別れている。今回ご紹介するのはAプログラム。5作品あり、10分のものが1本あり後の4本は20分前後の上映時間です。上映順にさらっとご紹介しますね。

「蝴蝶の泉」
雲南省に実在する蝴蝶泉に伝わる少数民族を主人公にした悲恋物語り。何とも言えない中国チックなキャラクター設定に魅了される。一切セリフが無くてもしっかり物語が伝わってきます。(83年・もっと古いかと思った)

「牧笛・ぼくてき」
これもセリフは無く、水牛の背にまたがって竹の横笛を吹く少年が主人公。動く水墨画に素直に感動してしまいます。水の中を泳ぎ回る小魚の様子や水牛が水に背中まで入って行くシーンなど最初の5分ほどでど肝を抜かされてしまいますよ。キャラクターは日本の村上勉に通じるものがありますね。(63年)

「猿と満月」
ボクは10分ほどの切り絵アニメが一番のお気に入り。とにかく猿たちがみんなとてもかわいいし、スピード感あふれる展 開、ほんとに素晴らしい! セリフが一切無くてもこれだけ伝わってくるものがあるのだと感心しました。(86年)

「琴と少年」
日本語のタイトルを知るまで、弟子になるのは女の子だと思っていた。これも水墨画のアニメ。絵と草笛と琴を使った音楽とが一体となって、アニメを観ているというよりも、一枚の水墨画を鑑賞しているような気分にさせられます。この作品もセリフはない。(88年)

「鹿鈴・ろくれい」
これも水墨画。主人公になる女の子がなんとも可愛くなくて「どうまなぁ」という感じだったけど、ストーリーは良く出来ていてお話しにグイグイ引き込まれてしまった。最後にはこの女の子が可愛く見えてしまうから不思議だ。親とはぐれた仔鹿と少女の出合いと別れをさわやかに描いています。

凄く出来がいい粒ぞろいの作品ばかりですので大阪で上映の際には是非ご覧ください。6月に入ってから扇町ミュージアムスクエアで公開される予定だそうです。
もう10数年前、中国に初めて行ったとき、杭州にあるホテルのテレビで流れていた中国製アニメが「孫悟空」だったなぁ、なんて思い出してしまいました。

おしまい。