「ダブルタップ」

レスリーの狂気


  

土曜日の4連戦。その後半戦は場所を心斎橋に移してパラダイスシネマで香港映画。まず、レスリー・チャンの新作「ダブルタップ」。
この映画、この日が初日。ファンが多いレスリーだけにどれほどの人が集まっているのかと思ったら...。なんとも淋しい。ボクが入場した時点で、たったの4人。映画が始まるまでに少し増えたものの、結局15名前後。

競技射撃。この世界にはまるで知識が無かったんだけど、なかなか奥が深そうだ。競技は正確さと速さで競われる。そのために技術と精神力。とりわけ高い集中力が求められる。競技者はピストルの手入れはもちろん、その改造や爆薬の調合までもこなしてしまうようだ、凄いなぁ。
高得点が得られる箇所に二発連続して的中させること、これは‘ダブル・タップ’と呼ばれる高等技術だ。

で、レスリーはこの競技の香港チャンピオンだ。その年の選手権でレスリーはミュウという警官の男と優勝を争う。二日間の競技を終えたが同点でプレーオフを行うことに。そして、まさにプレーオフが開始されようとしたその時...。男が乱入して審判や観客に発砲。会場全体が凍り付く中、レスリーは冷静にこの男の頭にダブルタップを決めた。

それから数年後、レスリーは事件の後遺症から競技を離れていた。医者には「眠れない」と漏らしていた彼だが、実はあの男を撃ち殺したときに‘快感’を感じていたのだ。
あの試合でレスリーと優勝を争ったミュウは刑事になる。ある日、彼は考えられないほど鮮やかな手際で射殺された事件に出くわす。これはよっぽどの射撃技術を持つ者の仕事だ。彼はレスリーの仕業だと直感する。

題材もストーリーも面白い。主演もレスリー・チャン。これで面白くないはずがなさそうだけど...、どうもなぁ。
確かに、最初から最後まで繰り広げられる発砲シーンは圧巻だ。でも、この銃に映画の焦点を置く余り、レスリーやミュウの心理描写がおろそかになりすぎている。あれほど銃の扱いに慎重で、ニワトリを撃つことにさえ嫌悪感を抱いていたレスリーがどうして射殺で快感を得たのか、その後、レスリーはどんな風に一線を超えて狂気の世界へのめり込んでいったのか、その辺りをもう少し教えて(観せて)くれないと、薄っぺらいアクション映画に成り下がってしまう。
そして、レスリーの彼女も「?」。彼女の役どころがもうひとつハッキリしない。映画に花を添えているワケでもないしね。ここは‘男の世界’を描ききって欲しかったような気がします。

結局、お客さんは正直だと言うことでしょうか?
3月8日まで公開中です。

おしまい。