「蝶の舌」 |
モンチョの眼差しが心に刺さる |
物語はいつもハッピーエンドとは限らない。
体制が変わることもなければ、世の中がひっくり返ったこともない。「世の中こんなものさ」と拗ねてみたところで、戦後の日本で生まれ、育ち、ぬるま湯にどっぷりつかっている。
ドン・グレゴリオの教室はなんとおおらかなんでしょう。男の子ばかりだが、年齢も体格もばらばら。「先生はぶつもんだ」とモンチョは聞いていたが、ドン・グレゴリオは決して手を上げないし、大声でどなりつけもしない。生徒達の自主性とヤル気を重じた「いい先生」だ。 ドン・グレゴリオだけではなく、モンチョの年が離れた兄も、モンチョを優しく見守っている(このお兄ちゃん、なかなかいい味出しています)。 スペインの共和制が崩れ、フランコ独裁制に移行する前のスペイン内戦前夜。今まで信じ、夢見ていたものが暴力の前にもろくも崩れ去ってしまう。激変する世の中で、モンチョ少年は澄んだ瞳のままで大人になったのだろうか。 さぁ、もう一度叫んで「ティロノリンコ!」「蝶の舌!」 おしまい。 |