「夏至」

色彩鮮やかなハノイの長い日


  

お盆休みを兼ねての夏休み。
拙宅にも姉たちが子供を連れてやって来る。日頃は静かなこの家も、この時期はうるさいぐらいだ。
この喧噪を逃れて梅田へ。ガーデンシネマは70名ほどの入りで盛況。この映画だからか、お盆だからか、それともこの時間帯(午前11:30の回)だからか、いつもとは全く客層が違う。30〜40代のご婦人連れがほとんど。この世代って普段はあまり映画館ではお会いしないのですがね。

母親の命日から、父親の命日までの1カ月を緩やかな時の流れの中で描いたお話し。お話しの中味はやや激しいのだけれど、画面からはその激しさは微塵も感じられない。穏やかなテンポで、1シーン、1シーンが比較的長く、ほんとに時が、感情がおだやかに流れていくように感じられる。

仲の良い三姉妹。前半はこの三姉妹が母の命日にご馳走を作る、そして、この姉妹がいかに仲が良いかが、ボクたちに判るようになっている。料理を作りながらの何気ない会話や、口から出る鼻歌がいつの間にかハーモニーを奏でることなどから。
開放的な家屋、そしてハノイでの生活の様子が、様々なカットでボクの目の前にあらわれていく。はっとするような色使いの連続で、眠気すら誘われるような時を前にして、目を見張らされてしまう。

後半になると、ガラリとお話しが変わる。一見、こんなに仲の良い姉妹だけど、それぞれが内面に抱える悩みは重く、深いことが明らかになって来る。あんなに幸せ一杯のように見えたのに...。

結局、彼女たちの悩みは解決したのか、あるいは解消されたのか、それはボクには判らない。セリフが無く、離れたショットから、ボクは想像するしかないからだ。でも「ハノイの午後から夕方にかけての静かな昼下がり。ここにも人間達の一見静かで、その内情は激しい人間の営みが繰り広げられている。それが解っただけでもいいじゃないか」。そんな気にさせてくれる映画でした。
色鮮やかな接写が、とても印象的です。

ハノイに行きたくなること間違いなし!、です。

おしまい。