「グリーンフィッシュ」

共感できるハン・ソッキュの情けなさ


  

季節外れのヒョウが降った昨日は、たかお先生宅で「目指せ豊作!開墾大作戦・2001」が行われ、開墾よりも焼き肉に力が入った楽しい一日でした。でも、寒かった! 今年は何が収穫できますでしょうか?

さて、この頃、韓国の映画を観る機会が増えました。
今回観た「グリーンフィッシュ」は1997年の韓国の作品。主演は今をときめくハン・ソッキュ。会場は梅田にあるテアトル梅田。日曜日の10:50〜の回にもかかわらず、満席で10〜20名程度の立ち見が出ていました。

ハン・ソッキュの情けなさがいい。
冒頭から、列車の中で殴られてしまう。男たちに絡まれていた女性を助けようとして、逆にやられてしまう。ホームで仕返しをしたら、列車に乗りそびれて、ホームからどこまでも逃げていく始末だ。
どうやら、兵役を終え実家に帰る道中のようだ。ようやくたどりついたソウル郊外の実家は、周囲がベッドタウンの開発が進んで姿を変えて、高層アパートが林立し、ハン・ソッキュウの家だけが昔のまま取り残されたようになっている。
長兄は刑事をしているのだが、夫婦の間は上手くいっていないようだ、次兄は鶏卵の移動販売に精を出している。妹は母には内緒で、水商売をしている。昔のように一つの屋根の下で、一家揃って暮らしたいというハン・ソッキュの願いは叶えられないようだ。家の周囲の風景が大きく変わってしまったように、彼の家族も家族を取り巻く環境も大きく変わってしまったのだ。

軍隊から帰ってきたら彼も何かをして喰っていかなければならない。でも、自分が何をしたいのか、自分でも判らない。
そんな時、列車の中で助けた女から電話が掛かってきた。彼女に会いに行ったハン・ソッキュは、そこで知り合ったヤクザ(?)の親分に何となく気に入られ、やがて舎弟(?)となっていく。
この過程でも、ハン・ソッキュは殴られてばかりだ。そして、あんまり自己主張をしない。全てが場当たりで、なんかふらふらと漂っているようだ。いわれるがまま駐車場係りになり、ヤクザの弟分になっていく。ホントにハン・ソッキュはそうしたかったのかは分からない。全部、向こうからの誘いかけに乗っかっただけみたい。
イライラしたものをブチ撒けられずに、母親の誕生日に出掛けて行ったピクニック先で、ケンカをする兄たちの周囲をクルマでぐるぐる廻るだけだ。

そして、初めて、自分から行動を起こしたマットン(ハン・ソッキュ)は悲しい結末を迎えてしまう。ラストのエピローグは、少し長すぎたような気もするけど、マットンの死を契機に、彼の家族は昔のように一つになれたんだろうか、と考えさせられました。
一途に生きているのだけど、何をしていいのか判らない、青年特有のイライラがふつふつと感じられる作品。でも、主人公が10代の若者ではなく、20代も半場の若者だけに、余計に抑制の効いたお話になっています。また、効果的に鏡が使われているのも印象的でしたね。
ボクはもう過ぎてしまったけど、人生の目標に悩んでしまうお年頃の方にはオススメの映画ですね(ほんとは「ペパーミント・キャンディ」の方がオススメだけど、グリーン→ペパーミントの順でご覧下さい)。

監督はイ・チャンドン、「ペパーミント・キャンディ」も監督した人で、この「グリーンフィッシュ」が処女作です。この人は、男のどこにも持って行きようのない怒りや悩みを表現するのが上手いですね。
共演者にはソン・ガンホ(「シュリ」や「クワイエットファミリー」)や「八月のクリスマス」でもハン・ソッキュの妹役だった人がここでも妹役で出ていますよ。

今週の金曜日まで、「太白山脈」「スプリング・イン・ホームタウン 」との3本変則時間割上映で公開中です。この「グリーンフィッシュ」のみ、来週以降もレイトショーで引き続き上映されるようです。

今日から4月。期待の新作がゾクゾクと公開されて、楽しみです。

おしまい。