「ザ・カップ/夢のアンテナ」

政治が絡めばチベットは重い


  

インドに亡命しているチベット僧たちが修行する寺院が舞台。チベット僧といっても多くは少年僧だ。どこの国でも子供達はサッカーが好き。野球が好きなのは、アメリカか日本か台湾ぐらいやで。
折しも、1998年のフランスワールドカップが開催中だ。少年僧のウゲンは夜に僧院を抜け出して、民家にテレビ中継を見に行くことが続いていた。ところが、ある夜「坊主は帰れ!」と民家からつまみ出された挙げ句、深夜に僧院に戻ったところを先生に見つかってしまう。

罰として炊事当番をさせられているウゲンだが、今夜がワールドカップの決勝戦という日、どうしてもテレビで試合が見たい。見たくてしかたがなくてお勤めもうわの空。ウゲンは、先生にお願いをすることにした...。

子供達のひたむきな願いって、ついついこっちも応援したくなるよね。やんちゃなウゲンたちが、ワールドカップを見られるのかどうか。

ストーリーは割と淡々と進んで行くんだけど、ウゲンたちを取り巻くサイドストーリーが結構、奥深いものがあります。
僧院の院長は、亡命生活がいつ終わってもいいように、いつも荷造りをしている。袋から取り出して拝むのはダライ・ラマ14世の写真。チベットから新しい亡命者がやってきて剃髪をする、ホームシックになった彼らにウゲンが「いいな、国があって、ボクにはここでの生活が全てだ」とつぶやくシーンがなんとも言えない。ワールドカップを見ていて応援するのは「チベットを支援してくれている国」だし、ウゲンの夢はチベットのナショナルチームの一員になること。

笑いがあって、ちょっとほろっとさせられる、すがすがしい作品ですね。
いつか、ウゲン達がチベットに帰れる日が来ることを祈らずにはおれません。
でも、きっとこの作品、大陸では上映されへんやろなぁ。

上映はガーデンシネマで、3/30まで。今回のお客さんは15名程度でした。

おしまい。