「最愛の夏」

基隆の光と影


  

大阪城のイベントの前くらいから一気に春めいてきましたね。ボクはコートの裏ライナーをはずし、コートを脱ぎ、とうとうカーデガンも脱いでしまいました。このまま春になることはないでしょが、これだけあったかいと心が弾みます。

台湾の映画で、会場が扇町のミュージアムスクエアなら「チャイニーズ・オデッセイ」の第3弾。タイトルは「最愛の夏」。99年の作品。
台北から北へ、列車でもバスでもだいたい1時間ほどの所にある港町「基隆(チーロン)」。ここがこの作品の舞台。舞台背景も物語も主人公一家の家族関係もなんか説明不足でよく分からないんやけど、映画はどんどん進んでいく。この映画のポイントは主人公の17才の少女、リー・カンイが不思議なかわいさ、魅力を持っていること。「初恋のきた道」のチャン・ツッイーのように、いつもどんな時でもカワイイのではなく、カンイはふとしたときに見せる仕草が妙に可愛かったりするのです(もちろんファンになりました)。顔立ちはいかにも中華圏の女の子って感じですけどね。カンイの恋人役のアピンもなかなかかっこいいですよ。

アパートの同じ階に住むヤクザの舎弟アピンと偶然知り合ったカンイは恋に落ちる。「ヤクザの舎弟」というとごっつそうやけど、実際は毎日ブラブラしてるだけだ。カンイの父親は事故で失明していて、マッサージ師として生活を営んでいる。彼女の弟は知的障害を持つ小学生だ。そんなハンディをハンディと感じさせないのは、カンイをはじめみんなの明るさと前向きな姿勢があるからでしょう。

カンイはアピンをデートに誘い出し、基隆の歩道橋の上で港を見ながら一夜を過ごす。その帰り道、知り合いに頼んで、小さなボートに乗せて貰い海に出る。カンイは船尾に立ち、服を着たまま仰向けのまま海に飛び込んでしまう。そんな無茶で、無鉄砲なカンイがなんとも言えずカワイイのです。

カンイは、この夏休みの間に、いろんなことを経験して、少し大人に近づいて行ったのでしょう。ストーリーが甘くて、分かりにくいことと、画面の暗いことが難点ですが、なんかほっとさせられるラストシーンとカンイの笑顔があるから許してあげましょう。
1999年の東京国際映画祭のグランプリ作品。
上映は終了しました。こっちは「ルアンの歌」と違っていつかビデオになるかもしれません。カンイの笑顔に逢いたい方は観て下さい。

おしまい。