「Love Letter」

ふたりの樹。


  

この土曜(10/27)から「リリイ・シュシュのすべて」という映画が公開される。その前夜祭という意味か、その前の一週間、岩井俊二監督の特集上映会があった。会場は新梅田シティのガーデンシネマ。ボクが観に行ったのは「Love Letter」。95年に公開された作品。
この映画を観ようと思ったのは、99年に打ち出された韓国の日本文化の部分開放策の一部として、日本映画の公開が解禁され(それまでは日本映画の上映はもちろん、テレビ番組(例外あり)、日本語の曲の演奏などは禁止されていたのです)、その第一段としてこの映画が99年の11月に公開、大ヒットしたからなのです。
ヒットしたのは、いかにも韓国の人たちが好きそうなストーリーだからかな。主演の中山美穂や豊川悦司は一躍韓国でスターになり、映画の舞台となった小樽観光を組み込んだ日本ツアーは大繁盛だったそうです。

なかなか興味深い設定だ。

婚約者・藤井樹を冬山遭難で亡くしてしまってから3年。博子は恋人がかつて住んでいた小樽に届くはずがない手紙を書いてみる。
この手紙は、博子の中で一つの区切りをつけるために書いたんだろうな。「もう充分に喪に服したから、あなたの呪縛から解放して下さい」という意味ではない。彼女の中ではまだ婚約者が生きている、まだまだ忘れられそうもない。でも、書いた手紙が宛先不明で戻ってくることによって、彼の死を、彼がもはや存在しないことを、外部の誰かの手によって確認することによって区切りをつけたかったのと違うかな。

でも、偶然が重なって、宛先不明で戻ってくるどころか、博子の手元には藤井樹からの返事が届く。

ここから物語りが大きく動き始める。

この返事は博子を有頂天にさせ、そして奈落の底へも落としてくれる。
彼は私に「ひとめ惚れ」したのではなかったのか、そう言って私に交際を申し込んできてくれたはずだ。でも、彼の心の中には中学生時代に慌ただしく別れてしまった同級生の面影を博子のなかに認めていたということがわかる。

小樽の街角で博子は、偶然もう一人の藤井樹とすれちがう。自転車に乗って遠ざかる彼女に「藤井さん」と呼びかける博子。藤井樹は一瞬自転車を止め振り返るが、博子には気付かず再び走り去ってしまう。

中山美穂が博子役を好演しているのはもちろん。藤井樹の少女時代を演じている酒井美紀がなかなかわいくていいですね。

この映画は博子が主人公なのかもしれないけど、本当は今も小樽に住んでいる藤井樹が主人公とちゃうかな。博子との文通によって、自分の中学生時代の想い出をひっくり返してみて、今まで気が付かなかった彼の思いを知るというのがテーマだったような気がします。

おしまい。