「事の終わり」

最愛の人に出会ったらどうすればいいの?


  

今までおよそ30年間通っていた散髪屋さん。そこで私を担当してくれたいたオッチャンが癌で急遽入院してしまい、もう私の髪を刈ることはできないそうです。入院したのがこの月曜日だったそうですから、先週の日曜日に散髪に行っとけばよかった。この散髪屋には年老いたマスターとまだ未熟なマスターの息子が残っているんやけど、もう店をたたむことになるそうです。こんな形で贔屓の散髪屋を失うなんて思ってもみなかっただけに、残念。この歳で新しい散髪屋を探すはめになるとは思わへんかった。今日は、急遽別の散髪屋に行っってんけど、妙に緊張して肩が凝りました。
今までは、散髪してもらう椅子に座ったら、髪型の話なんか一切せんと、釣りや競馬の話ばっかりして、40〜50分後にはいつものように出来上がりやったのに。「お兄ちゃんには随分長いこと通ってもうたけど、もうでけへんねん。どこかよその散髪屋に行って」と言ったマスターの顔も改めて見ると急に老けたように見えました。一日も早いご回復をお祈りしています。

さて、今回観てきたのは「事の終わり」。私にしては珍しく、白人が出てきて英語を喋る映画です。舞台は1940年代のロンドン。先日聞いていたラジオで誉められていたので、行ってきました。
会場は心斎橋ビッグステップにあるパラダイスシネマ。土曜の第1回目でも30名程度の入りでした。観終わって会場を出るときには随分多くの人が並んでいたので、私が思っていた以上に人気があるのかもしれません。

思っていたよりは良かった。

「あなたの靴下が憎い」
「どうして?」
「いつもあなたと一緒にいられるから」
「じゃあ、わたしの靴も憎いのね」
「ああ、いつもあなたを連れ去るから」

不倫を題材にした映画やねんけど「後ろめたさ」が妙になくて、主人公の男女がともに純粋さを感じさせるねんなぁ。奥方を寝取られる旦那が、これまた変に物わかりが良かったりして、冷静に観ると、少し歪んだ関係なんだけど。自分の旦那に対してだけは不誠実な奥方が、どうして愛人や「神」に対してだけは、かくも誠実に、純粋にいられるのか。それが解らない。でも、それは映画を観終わって何時間も経ってから思うことであって、映画を観ている最中はこの奥さんの純粋さに惹かれてしまうんやなぁ。

私は不倫を擁護するわけではないけれど、人って、必ずしも最愛の相手と結婚するわけでは無いし、運悪く、結婚した後で最愛の人と出会うかも知れない。そんなとき、人は一体どんな態度をとるべきなのか、何が正解なのか? そんなことを考えさせる映画だと思いました。また、「嫉妬」はある意味、人を燃え上がらせるすごい大きなエネルギーになるんだなぁ、と改めて思い知らされました。
ひとつ注文を付けるなら、ヒロインを演じた女優さんは、とても綺麗な方なんだけど、この映画にはもうひとつ合わない。ほんとは、もっと華奢で繊細な、力強く抱き寄せたら折れてしまいそうな女優さんの方が良かったんとちゃうかな。
おどろおどろしい愛憎劇ではなく、さらっと男女の愛とはなんぞやを考えさせてくれる映画です。カップルで是非どうそ。パラダイスシネマでもう暫く公開中です。

さて、低い山でも紅葉が見頃になっていますね。先週歩いた比良山系も見事な紅葉でした。こんなシーズンの賑やかな山もイイですが、紅葉が落ち着き静かになった山道を落ち葉の絨毯を踏みしめて歩くのもいいものです。あんまりしんどくないコースで、山頂ではゆっくり熱いコーヒーを飲みたいですね。気が付けば今年もあと二ヶ月を残すのみ。今世紀最後の山歩きはどこに行こうかと地図の上を散歩する今日この頃です。

おしまい。