「菊花の香り」 |
PHP研究所 金河仁 1,700円 |
以前からタイトルだけは気になっていた韓国の映画に「菊花の香り」という作品がある。日本では上映されていないのだけれど、ソウルでDVDを買ってきてもらい、先日拝見しました。その映画の原作がこの小説。
敢えてジャンルを分ければ「催涙系のメロドラマ」となるんだろうな。それは否定はしない。事実、最後の1/4ほどを移動中の阪神電車の中で読んだんだけど、不覚にも涙がこぼれそうになってしまった...。
出てくるのは容姿端麗の美男美女で、学歴も社会的地位も高い。住んでいるところも凄いし、生活水準も抜きんでている。まるで浮世離れした、夢のような暮らしを営んでいるわけだ。 どんな種類の「悲劇」に出逢うのか、物語りの冒頭に一部明示されている。読者はある程度心の準備を済ませた上でこの物語りを読み進める。それだけに、大きなどんでん返しや、あっと驚くような仕掛けがあるわけではない。にもかかわらず、これほどまでに読む者の心を動かす筆者の力は大したものだと言わざるを得ない。
大学のサークルで知り合った先輩・ミジュに憧れにも似た恋心を抱くスンウ。その恋心は一途な愛に変わるが、ミジュは年下の男の子だからだけではなく、スンウを恋愛対象として意識してはくれない。
実際に人生を生きていく上では、愛だの恋だの言う前に様々な困難や障壁があり、それらを乗り越え振り払って生きていくのに精一杯。だけど、ある程度の経済力が備わっていれば、壁は低く、余力たっぷりで真正面から「愛」に取り組める(羨ましいような、そうじゃないような...)。 タイトルは、ミジュの髪から漂う香りが「野性の爽やかさと、太陽の黄色い粉末が舞うような、心地よい香り」。すなわち「菊の花の香り」だったところから取られています。う〜ん、ロマンチック。
文学作品としては、そう高く評価されないだろうな。
映画を観てから、せっかく邦訳が出ているのなら、どうしてもこの原作が読みたくなり、ジュンク堂さんの大阪本店、紀伊國屋さんの梅田本店に行きましたが在庫がありませんでした。翌日、旭屋さんの大阪本店に行くと、すんなり見つけられました、ラッキー。 おしまい。 |