07/31/2005・お上りやすお下りやす 愛宕山

“千日詣”で 千日分ぐったり


この日一番元気だった森の音さん
撮影:カプ
さぁ、皆揃って出発で〜す
撮影:カプ

前夜の午後8時前に東北遠征(?)から伊丹に戻った。
さっきまで八甲田の麓にあるいで湯の里でのんびりしていたのに、わずか1時間半ほどで亜熱帯の関西地方へ到着。飛行機は偉大だと言うべきか、旅の風情が無くなったと申しましょうか。

八甲田から戻った翌日の7/31は、以前から森の音さんから「京都の愛宕山へ千日詣に行こう!」とお誘いを受けていた。悪友のデザイナー・カプにも声を掛け、三国小町さんも参加。なっちゃんは直前に怖気づいたのかキャンセル。都合4人で京都へ向かう予定。
お昼前、上空はにわかに掻き曇り、台風のような風と豪雨。
「こりゃ中止かな?」津軽で二日続けて歩いてきたので、三連投はつらいしな...。神様がボクの無謀な計画を止めようとしているのかもしれない。でも、ネットでレーダー画面を確認すると、前線が通り過ぎれば雨は上がりそうだ(便利だね)。決行にしよう!

嵐山から北へ少しあがったところにある清滝。ここが愛宕山のスタート地点になる。
愛宕山の山頂には、火伏の神様として信仰を集めている愛宕神社があり、特に7月31日の千日詣りは有名。7/31の夕方から8/1の未明にかけてお参りをすると、その1回分で、千日お参りしたの同じご利益(りやく)があるとか。だからこそ、三日連続山行という無謀を押してでも、この日に歩く意味があるはずだったが...。

午後の3時に西宮北口に集合。その後、森の音さんの家を経由して、中国宝塚から名神を経由して京都まで。
5時前には嵐山へ到着。
事前の情報によると、清滝地区での駐車は難しいとのことだったので、嵐電(京福電車)の嵐山駅周辺にクルマを置き、シャトルバスに乗車するのが賢明らしい。だけど、嵐山近辺の駐車場が夜の10時に閉まってしまうことが判明。これではクルマで来た意味がない! 結局駄目元で清滝までクルマを走らせると、トンネルの手前で数分待たされたものの、無事に駐車場へ入ることが出来た。う〜んこれって...。

まだまだ夕方と言うのには少し早いか、昼間の雰囲気が色濃く残る。
駐車場はほぼ満杯。そこいらじゅうに人の姿やハイカーの姿がうじゃうじゃ。「千日詣」の人気の高さが伺える。準備運動もそこそこに金鈴橋を渡って、朱塗りの鳥居をくぐれば、ボクたちも「千日詣」へスタート!

三日連続と言っても、そんなに身体は疲れていなかったし、昼寝もした。それに今日は片道2時間程度のコースに過ぎない。決して舐めていたわけではなかったけれど、実際はボクの心のどこかに慢心があったのは間違いない。
いきなりの急坂。前後を歩く人の多さ。そして早くも下山してくる方々が掛けてくださる「お上りやす」の言葉...。山歩きという雰囲気ではなく、縁日の中を歩いているような錯覚に陥る。
それに、驚くのは実に多様な人が歩いていること。ボクたちのように「さぁ、今から山を歩きますよ」という人は、どちらかと言うと少数派で、「ちょっと散歩から街歩き」って感じでそのままの姿をされた方も少なくない。中にはヒールが付いた靴を履いている婦人も...。若い人が多いし、子供も結構いる、それも赤ちゃんから小学生、中学生まで。文字通り、老若男女さまざまが入り乱れている。こんなことは普段のコースなら考えられない。
しかし、下山してくる方々の足元を見ると、皆さん結構泥で汚れている。昼間激しく降った雨のせいもあるだろうけれど、なかなかの悪路なのかもしれない。「こりゃ、舐めたらアカン!」そうアタマではわかっていたんだけど...。

しばらくは「こんな素人さんに負けてられない」とばかりに、快調に足を進める。
しかし、お助け水のあたりではもう全身が汗で濡れている、それ以降も汗は止まらず、まるで滝のように流れ出る。この付近から山道と石段のコースになる。登山道ではなく、愛宕山への参詣道だから、基本的によく整備されているし、道幅も十二分にある。
ところが、次第にボクの足は重くなり、ついつい何度も時計を見てしまう「えぇ、ウソやん。まだ15分もたってへん!」
二合目あたりで、思わず一息入れる。三合目の東屋でもう一回休憩したときにはもうすでに気分が悪くなっていた。「こんなハズじゃぁ...」と思ったところでもう手遅れだ。

相変わらずの石段が続き、前後にそこそこの人が歩いている。下山の列も途切れない。
京都出身の森の音さんから、下りてくる人とすれ違うときは「おくだりやす」と声をかけ、上っている人とすれ違うときは「おのぼりやす」と声を掛けるのだと教えてもらっていた。
元気なうちはこんな挨拶を交わすのことは、なんとも京都らしく、風情があっていいななんて思っていたけれど...。が、こうもバテていると、下りてくる人が「おのぼりやす」と言ってくれても、すぐさまに「おくだりやす」とは言葉が出てこない。しんどいから、口もあけたくない。「頼むから、もう声をかけんといて!」と祈りたくなる...。なんとも裏腹で恨めしい。

このコースは全部で50丁。麓が1丁で、全てではないけれど、各丁ごとにお地蔵さんがあり現在地が何丁か数字が書いてある。これとは別にコースを40分の○という表示もある。ふと視界に入った表示板が17/40だった時はショック。まだ半分以上残っているのか...。
山の中だからか、深い杉木立の中を歩いている(もがいている?)と、うるさいほどのヒグラシの大合唱。ふだんであれば、このヒグラシの合唱も「涼しげで、ええもんやなぁ」なんて思っているかもしれないけれど、今日ばっかりは単に、騒音や音としてしか認識できない。それほどボクは余裕を失っていた。

遅れて歩いているカプや小町にも追い抜かれ、もういよいよ末期症状。悪路に行く手を阻まれて退却するのならまだわかる。でも、バテてしまい足が進まないなんて...。
信じられない思いで、五合目にある休憩所に深々と腰を下してしまう。こりゃマジで撤退することを考える。
ここには冷たい飲み物を売っている売店があり、カプが“CCレモン”を買い、それを少し分けてもらう。いつもなら甘いものを飲むことは考えられないんやけどなぁ。しかし、不思議なことに、これで生き返った。
「もう少し頑張ってみよう」という気になり、もう進まないと思っていた足をもう一度い動かしてみる。しかも、幸いなことに5合目から7合目にかけては石段はない。さらに、どちらかというと平坦な道なのだ。この平坦な山道と“CCレモン”それに下がってきた気温、これらの要素が混ざり合ってどうにかこうにか救われた。

体力も気力も切れているけれど、それこそ意地だけで歩き続けた。
7合目の休憩所は、眼下に展望が広がり、日が落ち灯りが点き始めた京都市内が一望できる。「あの池は何かなぁ」「あれは宝ヶ池やで」そんないい加減な答を口に出すカプっていったい...(本当は広沢池)。ここから宝ヶ池は見えるわけないやん! でもそんな会話が成り立つほど元気になっていた。
はぁ、もう一度苦しい上りをもがくと、ようやく総門。この門の下をくぐり、急な石段を上がる頃にはもう真っ暗。いつの間にか、すっかり夜の帳が下りている。上のほうが明るくなってきて、社務所や露店が並ぶ。この光景を目にして「あぁ、着いた」と思ったけれど甘かった。コースはまだ上へ続いている。
気持ちはきっぱりと切れている、それだけにこの社務所前から230段あるというラストの石段は応える。これは拷問か、それともイヂメにあっているのか?
  この石段、角度も急で一段一段がいちいち大きい。ここまでで消耗し、気持ちが着いた気になっているから応える。何度も何度も立ち止まって、汗をぬぐい息を整える。

そして。
そして、とうとう愛宕山に到着!
ここには山の風情も何もないけれど、確かに着いた!

やっぱり、山歩きは“気”が大事。1,000mにも満たない924m、そして2時間のコース。そんな気の緩みが死を招きました。身体はガタガタ、全身大汗で濡れ鼠。しばらくは口を開くのも億劫な状態でした。途中から先行してもらった森の音さん、ボクより30分も前に到着されていたとか...。お待たせしました。
上にも書いたけれど、まず舐めないこと。それと神社と言っても1,000mクラスの山です、それなりの足回りが必要でしょう。また、この日は「千日詣」という行事の日ですからコース上に飲み物を中心とした売店が出ていたけれど、普段の日なら麓の清滝から山頂の社務所までの間にお店はないでしょう。汗もかくコースです、タオルと飲み水も十二分にご用意くださいね。
最初はボクみたいに飛ばし気味の方も多いでしょうが、周囲に惑わされず、マイペースでチャレンジしてください!

しかし、この晩に買った愛宕神社のお札を来年返しには、「行きたくない」なぁ...。
なっちゃんが直前にキャンセルしたのは、つくづく正解やってんなぁ。

おしまい!

登山口鳥居17:25〜五合目18:30〜19:45愛宕神社本殿20:35〜21:45登山口鳥居

※今回はカメラを携行するのを忘れたので、撮影はカプのケイタイに付属しているカメラによるのものです