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穏やかな山容を見せる雨乞岳 帰路、日野町から見上げる |
先週の日曜(5/29)、天気は良かったけど猛烈に暑かった。翌月曜は昼過ぎから一時横殴りの雨になり、もう梅雨入りを思わせた。しかもそのまま“熱帯夜”になり、季節が夏に向かって変わっていくのが体感できた。
が、一転して梅雨前線が南下。秋を思わせる乾燥した高気圧がやってきた。さすがに日中の気温は上がるけれど、空気が乾いていて心地よい。まるで“誘われている”ような気分。そんな涼風に導かれて伏見や奈良に取材に行くと「なんで、仕事の日に、こんな天気やねん..」と恨み言も呟きたくなる。
天気予報をじっくり見る。
「ひょっとしたら、週末までこの晴天が続くかも!」
「でもなぁ、最近の天気予報はいっこもアテにならへんからなぁ」
木曜にはもう“その気”になっていた。金曜は素早く職場を後にして、そそくさと夕食を済ませ床につく。
まだ朝の気配すらない。さぁ、出発!
* * *
昨年の3月に近江八幡から、まだ雪の帽子をかぶっている姿を見上げて以来、ようやく歩くことが出来る。しかも、昨年の8月にはすぐそばまで行きながら、コースを間違えてしまった「雨乞岳」。
今回は前回の教訓が生きているからスタート地点を間違えることもない。20台は置ける武平峠の駐車場(滋賀県側から見て、県境のトンネルの手前)には先行のクルマが3台停まってる。
準備体操、ストレッチで身体をほぐし、装備を整える。気温は15度ほど。ヤッケをはおる。スパッツも一応つけ、ストックも2本。地図を確認して“雨乞岳の登山口”へ向かう。
見上げれば、三重県側からガスがどんどん流れてくる。ここまでの道中は晴れ上がり、満月を少し過ぎた真っ白なお月様が輝いていたけどな。
よく踏まれたコースが付いている。
最初はそこそこの急勾配。植林の鬱蒼とした径。踏まれているとは云うもののところどころ崩れていて、決して歩きやすいコースではない。
やかましいほどのウグイスの合唱団が迎えてくれる。
普通、ちょっと山に慣れた人なら「ここにコースが続いているな」と予想がつくものだけど、ここのコースはちょっと違う。その予想することもなく予想したものが裏切られ、意外な径が続く。
すぐに沢伝いのコースとなる。沢を右左と細かに渡りながら、上り基調ながらアップダウンを繰り返す。野鳥のさえずりと沢の水音が谷にこだまする。
植林は切れ、自然林。さすがに初夏の山だけあり、若葉が眩しく繁っている。不思議なことに下草が繁っておらず、ちょっと不思議な光景。新緑のカーテン越しに淡い光線が地面に届いている。幻想的とよんでもいい。
ヤッケを着ていてもうっすら汗をかく程度で、脱ぐこともなくそのまま歩く。やがて、コクイ谷との出合い。左にとってクラ谷を詰めていく。
クラ谷とは、暗谷なのか。静かな谷ではあるけれど、本当に薄暗い。
梢越しに見える青空が近づいて来る。ぽっかりと稜線に出た。
雑木林の道。涼風が駆け抜けて行く。気持ちいい。
今までの暗いコースが終わり、ここからは明るく楽しい稜線歩きのはずだった。
なのに、しばらく馬酔木に酔いながら進むと、いきなり熊笹の大海に放り込まれる。コースが掘れていて、大きなU字側溝の中を歩いているようなものになる。その両脇に、ボクの身長より遙かに高く笹が茂り、上空を覆っている。笹の丈は高くなり低くなり。U字側溝の掘れ具合も深くなったり浅くなったり。ボクの顔は笹の海から出たり、沈んだり(ほとんどは沈んでいたけど)。
“笹を漕ぐ”という言葉は知っていたけど、知っているのと実際に行うのでは大違い。決してしんどくはないけれど、恐ろしく気が滅入る作業。当然歩く速度も鈍る。いや、嫌になってしまう。
突然、U字側溝が終わる。腰から上が熊笹の大海原に出る。
「ふ〜っ」気持ちいい。清々しいとはこんなときに使うべき言葉なのかもしれない。
東雨乞岳まではもうすぐ。
東側には御在所山、鎌ケ岳。ガスが流れて鎌ケ岳は姿が見えない。北側には鈴鹿の山がたおやかに連なり、遙か向こうにあるのは伊吹か。西には綿向山がすぐそこに大人しく鎮座している。
今朝は風が弱いのだろう、湖東に広がる平野はスモッグに霞んでいる。
ベンチも何もない。そっけない山頂。
ここからもう一度笹の原っぱ(のように見えるけど、ここも深い)をかき分けて行けば10分で雨乞岳。
どう見ても、展望も達成感も東雨乞岳に軍配が上がる。雨乞岳はひっそりと静かに三等三角点を抱えている。
帰りは来た道を戻る。
これが恐るべき長さで、上がってきたときはさほど感じなかった勾配を降りるときには実感してしまう。最期には疲れ果ててしまい、歩くのがほとほと嫌になってしまった。
それでも、上がってきたからには帰らなければならない。デジカメを片手にのんびり戻りました。
ボクが雨乞岳までに3名の先行者に出逢う。正直、それだけでも驚いていたのに、帰り道は70名近い人とコース上ですれ違いました(いちいち勘定すんなよな!)。もっとマイナーなコースだと思っていたので、この意外な人気にびっくり。スタート地点の駐車場はクルマであふれ、路肩にもたくさん停まっていました。
決して歩きやすかったり、楽しみが多いコースではないけれど、熊笹の海を泳ぎ切り、その後東雨乞岳での展望は何物にも代えられない素晴らしさを持っているのも確かですね。
それに、皆さん、この千載一遇のチャンスを逃さず歩きにいらっしゃったのでしょう。
帰路、永源寺町まで足を伸ばし、池田牧場でジェラートとその近くにあるお米やさんで永源寺米をお土産に買って帰りました。
* * *
払う努力の割には得られるものがそう大きくないので、誰にでもお勧めできる
コースではありません。
沢を伝うコースなのと一部崩壊しているで、足拵えは万全に。また、前日あるいは当日が豪雨だった場合は延期されるのが無難。
途中はほぼ日陰のコースですから、陽射しが強い季節向きのコースとも言えるでしょう。
また、雪が残る場合は熊笹の海で全身びしょ濡れになる覚悟が必要でしょう。
おつかれさまでした。
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