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下山途中に振り返るマーオーシャン(馬鞍山) この雄大な山容! |
昨年の11月に初めて香港のコースを歩き、その素晴らしさに魅了された。
日本の、いや地元の六甲の山さえ極めていないのに、何が香港かと思われるかもしれない。でも、今まで旅先としてしか知らなかった香港、ショッピングと美食の街と思われている香港に、数え切れないほど素晴らしいコースがある。
盛夏を避ければ気候も日本と大きく変わらない。コースは良く整備されている。事前にしっかりと情報収集して、ムリのない計画と充分な装備で臨めば、間違いなく素敵な想い出が残せる。観光だけでなく自分の足で歩く香港は、今まで知らなかった一面を魅せてくれる。
その香港への扉を開けてくださったのが、毎週香港のコースを歩いていらっしゃる「香港ハイキング」の先達・光頭老さん。今年はようやくご一緒させていただきました。
MTR彩虹駅に集合したのは9名。もちろんみなさん初めてお会いする方ばかり。「日本からのゲスト」ということで暖かく迎えていただきました。
いつもは単独か気心の知れた小さいパーティーで歩くことしかないので、正直言ってちょっと不安だった。他の人と較べて自分のペースが早いのか遅いのか、そんなところもよくわからない。でも、そんな心配は全くの杞憂に終わった。みなさん自分のペースで歩かれることがすぐにわかった。自分のペースで歩いてOK、何も競わない、何も強いない。他人に対する思いやりがあって、なおかつ自己責任で出来ることをする、ムリはしない。そんな「大人」のパーティでした。
さて、コースのお話し。
MTR彩虹駅前からは西貢までミニバスで。ミニバスは降りる場所がしっかりわかっていれば利用価値は大きい、何しろ速さと小回りが利くことが売り物。
そろそろ西貢の中心地に近づいて来た頃「さぁ降りましょう」ということになった。降りた場所は「菠蘿峯路(Po Lo Che Rd.)」。ここが今日のスタート地点。
ここで沙田から来られていた方と合流して総勢10名のパーティになる。装備を整え、軽く準備体操をして出発。しかし、コースを良く知っていないと、ここがマーオーシャン(馬鞍山/Ma On Shan 702m)への起点になるとは夢にも思わない。そしてもう一つはここが海岸沿いにあり、ほぼ海抜「0」ということも凄いですね。
最初は急坂のちょっとうらぶれた市街地を行く。乗用車も来れば、ミニバスも走っている。やがて、市街地が途切れはじめると...。
目を上げれば澄みきった青空をバックにピラミッドヒル(大金鐘/Pyramid Hill 536m)がでんと姿をあらわす。その右奥には今日の目的地マーオーシャンも鎮座している。う〜ん、ほんまにあそこまで歩けるのかなぁ。いつものことながら、あの山が1,000mに満たないとは思えない。
やがて舗装道路とは別れを告げ、大雑把な作りの山道へ。相変わらずの急坂で汗が流れる。
すでにスタート地点で半袖の姿になっている。考えてみたら関西のゴールデンウィーク前のような感じか。気温はそんなに高くないし、空気は乾燥している。爽やかな風に汗もすぐ乾く(タオルはほとんど使わなかった)。
ポイントポイントには休憩できるようなスペースが設けられてあり、適当に息を入れながら歩けるのが嬉しい。パーティは各自のペースで歩いて行く。このコースには地元の方々もそこそこ歩いている。このころはまだ歩きながらお喋りが出来るほど元気だったんだけど...。
やがて、バッファローヒルから遙かクーロンピークまで連なる稜線にまで到達。一旦ザックを降ろして大休止。ここからはもはや灌木もなく、笹と見たこともないようなイネ科かアシの親戚のような茎しかない植物が腰ほどまでの高さで草原をなしている。
これが香港なの? 思わずそう思いたくなる。左手には沙田の街並みが垣間見られ、右手には西貢の海と島が見える。陳腐な例だけど阿蘇の草千里を思わす。
眼前にはピラミッドヒルの威容が控えており、そこに延びる小径がボクに「おいでおいで」と声を掛けてくる。
昨日のクーロンピークは我慢したけれど、ここまで来ておいてピラミッドヒルをパスするのはあまりにももったいない(そんなケチくさい考えがアカンかってんけどなぁ)。聞くと、二人はもうアタックを開始しているらしい。ここでパーティは分散して片や巻き道を進み、もう半分はピラミッドを攻めることになった。
ピラミッドヒルとは良く言ったもので、この昴平(ナンピン)から見上げる姿は美しくピラミッドのように見えなくもない。昨日のハイジャンクピークの感覚で考えれば、ここから20分もあればピークに立てるだろう(甘かった...)。
例によってほとんど直登。歩くのではなく、よじ登る感覚。息が上がる、何度も何度も足が止まる。目の前に壁があるのを手と足を使って上がっていく。ひゃーもうあかん、と思いながらも忍の一字で脚を、いや身体を運んでいく。
考えてみたらこのピラミッドヒルもかわいそうなピークだ。もっと別の場所にあれば人気のある山になったろうに...。マーオーシャンの傍にあるがために、眺められるだけの前衛山になってしまい、ボクのような物好きしかアタックしないんだから...。
静かなピークだ。風が心地よい。
西貢方面は恐いほど切り立っている。眺めがいいのは、なんだか当たり前になってしまい(慣れってもったいないなぁ)、感激こそしないけど、心と気持ちは洗われます。はい。
巻き道との出会い。もうひとつ上の肩でみなさんが待っている。ここがきつかった。ピラミッドヒルで随分エネルギーを使ってしまい、余力はそんなにない。最近そんなに歩いていなかったしなぁ。今日はなんて言うロングコースだ、なんて恨めしく思ってしまう(でも、ピラミッドをアタックしたのは自分の勝手なんだけどね)。左足のふくらはぎの筋肉がピクピクいっている。この感じはソラクサン以来で、なんだかやばそうだ。
でも、ここで停まったらもう腰を上げられそうにないょ。騙しながら頑張るしかない。見上げればマーオーシャンのピークはまだまだ。
肩を過ぎれば再び雄大な草原。振り返れば姿を変えてしまったピラミッドがボクを見て微笑んでいる(ような気がする)。いつの間にかピラミッドのピークはボクより下にあるよ。
次は右足の膝の上。こんなところがぴくついてくるなんて初めてだ。
今日は光頭老さんがボクのために選んで下さったコース。その栄えあるコースで音を上げていられない。気持ちだけでも、ファイト一発!
下から見上げていたマーオーシャンは二つのピークを持っていたなぁ、この壁を登った先はきっと偽のピークで、そこからもう一踏ん張りやろな。ほんまのピークまで後どれくらいやろう...。
そう思いながら足を進めると、そこには三角点を示すコンクリの円筒があった。そこそこ広いピークにはみなさんザックを降ろしてくつろいでいる。達成感ではなく、安堵感が広がる。
あぁ、なんとか辿り着きました。顔だけは平気な顔をしていたけど、もう死にそうでした!
ボクもどっかり腰を降ろして、一息、二息。
考えてみたら、みなさんボクと同じ程度か上の方ばかり。それなのに、みなさん平気な顔をして、楽しそうに語らっていらっしゃる。大したものです。
こうしてたまにはパーティーで歩いてみないとアカンかなぁ。
それにしても、今居るここよりもう高いところがないことは幸せだ(もう歩かなくても済むのが一番だけどね)。
独立峰のように見えていながら、実は北西にも稜線が続き、もちろん南側はクーロンピークまで続いている。テントを担いで縦走か(でも、香港はアプローチが信じられないほど短いからそんな必要もない)。
東側には、霞の向こう側にうっすらとシャープピークも見える!
一旦、肩まで上がってきたコースを戻り、そこからはだらだらと下り坂。いつの間にか森の中のコースになり、振り返るとマーオーシャンとピラミッドの雄大な姿が景色に溶け込んでいる。よくぞ、あんな山を歩けたものだ。
一仕事終えた安堵感、一緒に何かをやり遂げた連帯感。まぁ、そんな大層なもんではないけれどいろんな方とお喋りを楽しみながら歩くのは楽しい。
このコースは人気があるコースなんだろうな。それに今日は天気のいい日曜だもの。どんどん人と出会う。静けさを求めて彷徨う普段のコースとはまるで違う。陽気でわいわい。これはこれでいいものです。
いつの間にか森のコースに入る。とたんに鳥のさえずりが耳に入ってくる。そう、香港はものごっつい懐が深い!
西貢まではバスで戻り、海岸近くの海鮮料理のお店で遅い昼食兼打ち上げ。
う〜ん、美味しかった! しかし、今日バテバテになって消費したカロリーのほとんどをここでのビールですっかり取り戻してしまったなぁ。
いやぁ、お疲れさまでした。そして光頭老さんはじめご一緒いただいた皆さん、ほんとうにありがとうございました! 冗談ではなく、またご一緒してくださいね!
ちなみに光頭老さんの今回のレポートはこちら。この光頭老さんのサイトは写真が豊富(恥ずかしながらボクも写っています)。それだけではなく、香港のコースはほぼ全て網羅されている「スグレモノ」ですょ。
※参考地図:
(地図名)新界西北部郊區地図 第三版・2000/Countryside Series North-West New Territories Edition 3 2000
(発 行)地政総署測絵所発行/Survey & Map Office Lands Department
おつかれさまでした。
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