広島で勤務していた時はあんまり山歩きに興味がなく、山へは渓流釣か水を汲みに行くぐらいだった(もったいなかったなぁ)。今回はそんな反省もこめて(?)、ある意味広島を代表する山を歩いてみることにした。それにこの山行は、山から下りてから応援予定のサンフレッチェ広島の「J1残留祈願」も兼ねている。
向かったのは、宮島にある霊峰・弥山(みせん・529.8m)。そんなに高い山ではないけど、海抜0mの海岸線から一気に上がるので正味この高さを歩くことになります。
普通、宮島を観光するときは連絡船で桟橋に着いて厳島神社を参拝。それから紅葉谷公園にあるロープウェイを使い、獅子岩まで行きそこから山頂まで歩くコース。これならスニーカーでも大丈夫だし、実際歩くのは片道20分程度。
しかし、せっかく弥山を歩くのにこのコースではもったいないし、ボクの主義にも反するので、いろいろ調べた結果、桟橋から包ケ浦まで行き、包ケ浦自然歩道を経由して博打尾(ばくちお)コースに合流してロープウェイの榧谷(かやたに)駅を経て獅子岩駅まで索道沿いに足を伸ばし、そして山頂を目指すルートを歩くことにした。
適した地図が無いので1/25,000の「厳島」を用意した。でも結局、最も役に立ったのが宮島口駅に置いてあった「みやじま自然散策マップ(宮島観光協会発行)」でした、もちろん無料。
準備万端整えて、前夜は早く就寝(単に酔っ払っていたから早く寝たのかもしれない)。
翌朝は4時半に起床、5:51に広島駅を出る始発電車に乗るためだ。まだ外は暗いが、外を見ると道路が濡れている、嫌な予感。着替えを済ませ荷物をまとめて暫くしてからもう一度窓の外を見ると、大粒の雨が窓を叩き始めていた。予報では朝方は一時雨だったなぁ。
傘をさして出発。6:25の連絡船に乗り、宮島桟橋に着いた時もまだ雨は降り続いていた。「どうしようかな?」思案のしどころ。今回を逃すと次に弥山を歩けるのはいつになるかわからない。
閑散とした待合室は誰もおらず、淋しいもんです。このころにようやく西の空が明るくなってきた。雨も心なしか小降りになってきたような気がする。思い切って行ける所まで行ってみよう、あかんかったら引き替えしてもいいし、ロープウェイで降りてきてもいい。
雲が流されて、その切れ間から対岸にある大野町や廿日市の山が姿を見せた。せいぜい400〜500mほどの山が連なっているんだけど、その稜線にはうっすらと白いものが見えた。どうやら雪のようだ。温度計に目をやると5度程度。ボクはそこそこの装備をしているので、寒さは感じなかったけど、11月初旬にしたら冷え込んでいる。ここからは雲に隠れてまったく見えない弥山の山頂付近はどうなんだろう?
海岸線に沿って東へ、傘をさして歩き始める。途中、杉の浦で雨脚が強まり、集会所の軒先を借りて雨宿り。「牡蠣打ち場(殻つきの牡蠣を水揚げして、殻から身を取り出す作業をする場所)」からベルトコンベアーの動く音が聞こえてくる。朝早くから作業が始まっているんだなぁ。
小降りになりそうもないので、仕方なくまた歩き出す。包ケ浦は集落はなく、あるのは砂浜の海岸とキャンプ場や宿泊施設、スポーツ施設が完備された自然公園だけ。晩秋(初冬?)のこの時期の早朝にこの公園を利用している物好きはいるはずもなく、静かな公園には冷たい雨に打たれて困惑顔のシカが数頭うろうろしているだけだ(宮島のシカは全く人見知りしない、今まで山で出会ったどのシカよりも肝が据わっている、と言うかずうずうしい)。
テニスコート脇にあるあずまやでもう一回雨宿り。タバコを一服。うーん。どうしようか。
ごちゃごちゃここで考えていても仕方ない。
バンガロー村を通り抜けると自然歩道の始まりだ。「紅葉谷自然歩道」の標識に従って歩けばいい。今までは開けた海岸線の舗装道路だったけれど、ここからは地道となる。うっそうとした山道をリュックを背にして傘をさして歩くのはなんだか奇異な感じだけど、それも仕方ない。何事も経験だしね。
予想に反して登りは大したことはなく、そう息が上がるほどでもない。ここまでに充分身体は温まっているし寒くも無い。後は雨が上がるのを期待するだけ。
何度か大きくカーブを取ると突然視界が大きく広がる。天気が良ければなかなかの展望のはずだ。でも残念ながら、対岸の景色もうっすら見える程度。
この山には期待以上にツバキが多い。どこかにまだ実をつけているはずだと目を凝らすが、なかなか見つからない(結局、頂上付近で一つだけ採集できました)。
傘をさして歩くのは思っていたほど苦にはならないが、いつも以上に視界が狭くなる。早く上がらないかな。途中、何度か傘を閉じてもいいような小降りにはなったが、どうも良くないね。
もう一度、視界が広がり、眼下に厳島神社の大鳥居が見えた。対岸にある大野町もよく見える。やっぱり、山の上の方は雪景色しているようだ。それでも寒さは全く感じない。
暫く歩くと下りになり、やがて博打尾コースとの出会い。本来ならここで一休みしたいところだけど、腰を降ろす訳にはいかないのが残念。コースは再び上りとなるが、間もなく尾根筋に出て楽しい散策コース。左手に宮島の裏手と海が見える。海を見ながら山歩きが楽しめるのもなかなか趣があっていい。幾つかの巨岩が稜線に鎮座しているのが不思議、さすが霊山だけあるな。
このころから、不意に大きな雨粒が増えだしたと思ったら、瞬く間に雪に変わった。湿って水気を多く含んだボタン雪が「どすん」って感じで落ちてくる。まだ、11月だと言うのにね。
紅葉はちょうどピークを迎えていてロープウェイの乗換駅・榧谷の直前では見事に真っ赤になった●●(木の名前を調査中!)の廊下が10数mも続いて、それは美しかった。感激。
榧谷駅でようやく休憩。やっと屋根があって乾いた場所があった。リュックを下ろすと、自分の背中からもうもうと湯気が上がっているのがわかる。雨や雪で濡れているのと汗とでもう全身ぐっしょり。リュックも随分濡れてしまった(真剣にザックカバーを買おう!)。
ロープウェイで麓から上がってきた人が、降り続く雪を見てわいわい騒いでいる。
獅子岩までもそうしんどくはない。左手に海を見ながらの尾根筋歩きだ。「サルに注意」の看板が増えてきた。シカもいればサルも多いのがこの宮島なのです(でも、結局おサルさんには会えなかった)。
獅子岩付近ではうっすらと白くなっている。
ここからが意外としんどかった。紅葉谷コースとの出会いまで一旦下がって、今度は上り。もう目の前が山頂だという思いからか、ここからの石段が結構こたえる。青息吐息でもう一息。弥山本堂を過ごして三鬼堂、観音堂、文殊堂、そして巨岩で出来た岩の門をくぐるとようやく、山頂。
まだ雪が降っている。展望はまるでなし(残念!)。
三角点に「でん」して「おつかれさまでした」。
山頂には一階が売店(この日は閉じられていました)、二階と屋上は展望台になっている建物があり、雨に濡れていない二階の存在はありがたかった。ザックを降ろしてベンチにどっかり座り込んでしまいました。いつしかすっかり息も荒くなっていたんやなぁ。
ストーブに火を入れてお湯を沸かしている間に、すっかり身体が冷えて(屋根はあるけど吹きっさらしだしね)しまい、あわててフリースを着込みました。
獅子岩周辺にはあれだけ観光客の方がいたのに、この山頂には誰もいない。淋しいな。でも、この雪だもの、仕方ないね。
小さいカップヌードルとコーヒーが身体を温めてくれる。こんな時が至福の時間なんだから安上がりやなぁ。
一息入れていると、ようやく雲が晴れていつの間にか陽も差し込んできました。サンフレも茨の道を歩んできたけど、シーズンが終了時には今のこの瞬間のように陽が差し込んでいたらいいのにな。今日のこの天気が、サンフレの今年のシーズンの象徴しているような気がしてなりません!
太古からの自然がそのまま残されているという弥山周辺はさすがに自然の濃さを感じました。これが、もし朝から好天に恵まれて、この山頂が芋の子を洗うような人手だったら、きっと自然なんて感じる間もなかったんでしょうけどね。
登りに予想外の時間を消費してしまったので、帰りは横着してロープウェイを利用。車内は暖かいし、天気もすっかり回復して何だかヘンな気分で紅葉谷公園まで一直線。
麓ももみじの紅葉がまさにピークを迎えており、紅葉狩りにお越しの方がたくさんいらっしゃいました。その人手は休日の本通り(広島一の繁華街)並でしたよ。でも聞こえてくる言葉は広島弁よりも九州の言葉や関西弁が多かったような...。
今日のコースは時間や距離的に多少長いかもしれませんが、危険だったり難しい箇所は無く、道に迷う心配もまずありません。小学校の中学年以上なら大丈夫。春秋の気候のいい時期にオススメ。天気が良ければ絶好のパノラマコースだと思います。
厳島神社にも塀越しにサンフレの必勝を祈願して、連絡船に乗り込みました。
おつかれさまでした!
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