08/16・大山

見るのと歩くのでは、大違い


7月の終わりに出張で松江に行った。その道中で見た大山は素晴らしかった。
良く晴れた日で、その姿が隠れることなく全て見えた。見上げる角度によって刻々と変わる大山の姿は孤高でなにか凄みさえ感じさせる。南から見上げても男性的な山容だが、北(米子)から見る大山の荒々しい北壁は、日本の山ではないような雰囲気だ。そして、広々と広がる山裾は豊かな自然を感じさせる。
それまではこの山にさして興味を持っていなかったが、この出張を期に俄然歩いてみたくなった。最高峰は1,729mの剣が峰。しかし、最高点には行けない。登れる最高点は1,705mの弥山。周囲に連なる山塊を持たない独立峰。

出張から戻って以来、週末が近づくと「ひまわり」の画像をチェックして、山陰中央新報(松江にある新聞社)のweb-siteで大山の天気予報を見ていた。でも、この夏はいつまでたっても前線が日本海や朝鮮半島に停滞して、あの出張の日のようなピーカンの天気がやって来ない。
この日もいつものように朝に「ひまわり」の画像を見る。遙か南方に台風がある。そして何故か前線が北上して山陰付近には雲がない。いよいよチャンス到来だ。いつもは早朝に山を歩くことが多いが、そんなことは言っていられない。素早く準備を済ませ、クルマに積み込む。8:00少し前に自宅を出発した。

登山口の到着したのは10:30過ぎ、米子道から見える大山は残念ながら雲の中だ。それでも、時折雲が払われ山頂部分が覗く。
何が驚いたと言って、人の多さだ。登山口がある大山寺はクルマも人も多い。春や秋のシーズン中の六甲山頂のような感じだ。それでも老若男女、こんなに人が多いのは初めての経験だ。手早く装備を整えて、登山口を目指す。

唐突に「夏山登山道」の標識がある。今日のコースはこの夏山道の単純な往復。分岐点もほとんどなく、極端な話しをすれば地図無しでもOKです(実際、地図を持っている人をほとんど見かけなかった)。
小学4、5年生の10名ほどの集団と一緒になる。こいつら元気いいんだ。最初の石段を駈けるように上がっていく、ついついボクも負けじと早足になる(それがあかんかったんかなぁ)。最初は杉の古木を見上げて良く整備された石段だ。じきに自然林に変わり、石段も姿を消し、幅の広い地道。一汗かくまもなく「一合目」の標識だ。
今から登る人も相当数いるし、汗をかきながら降りてくる人も多い。山歩きに来ましたといったボクのような装備の人は少なく、どっちかというと散歩って感じでみなさん軽装だ。足元もスニーカーかウォーキングシューズ。ちゅうことは、楽勝なんかなぁ?

次第に傾斜がきつくなる。基本的に登山道は木の階段でステップが切ってあるんだけど、かなり荒廃していて、足元はそんなに良くない。これは整備されていないのではなく、雨で土や石が流れてしまっていることとこのコースを歩く人の数が多すぎることが原因だと思う。
息が荒くなる。先行者を抜いたり、足の速い人に抜かれたり、降りてくる人を待ったりしながら「二合目」。さらに厳しい登りをえっちらおっちら足を運ぶとようやく「三合目」だ。ここで、たまらず「一本入れる(休憩する)」。このコースには途中に水場は無いので、歩き始める前に必ず水の用意をしておきましょう。この辺りは一面ブナの自然林で、鬱蒼としている。
「六合目」まではこんな調子で、各合目の標識で適当に腰を降ろしたり水を補給したりして足を運んだ。正直言って相当きついんだけど、上からどんどん軽装備の人が降りて来るので「弱音を吐いてられない」と無言のプレッシャーを受ける。「六合目」は展望が効き見晴らしのいいテラス状になっている、ベンチも置かれている。登ってきた人、降りてきた人、それぞれ一息入れている。ボクもザックを降ろし、汗を拭う。
ガスの切れ目から米子の街や弓ヶ浜、そして中海なんかを見ることが出来る。快晴だったらどれだけいい眺めなんだろう。それを考えるとちょっと悔しい。見上げれば、一面のガスで何にも見えない。

ここから上はブナの森も切れてしまい、足場は露骨に悪くなる。傾斜も急だ。それこそ、ヒーヒー言いながらひたすら我慢で高度を稼いでいく。大山のこのコースはひたすら尾根筋を一本調子で登っていくつらさがある。首からかけているタオルはすでに汗でびっしょりだし、シャツもズボンも汗を吸ってぐっしょり。すっかり消耗している。
ひよっこりと木道が現れる。ちょっと嬉しい。
ここからは角度はぐっと楽になるし、今までのデコボココースから解放されるだけでも全然違う。でも、悲しいかな、疲れていてもう膝が上がらない、よたよた歩くだけだ。
木道をしばらく行くと左手前方に弥山の頂上小屋が視界に入ってきた。具体的な目標物が視界に入ってくると不思議なもんでまた頑張れる。小屋を左手に見てようやく山頂の標識に到着だ。

でも、全く達成感はなかった。

山頂にはおよそ200人はいたでしょうか、みんな思い思いの場所で弁当を広げたり水分を補給したり...。ここにある風景とざわめきはここ数年ボクが歩いてきた山とは全く別のものだ。おまけにガスがきつくて下界への展望がほとんどない。風も微風で、待っていてもキリが晴れる可能性は低そうだ、残念というか運がないというか...。
ちょっとシラケた気分のまま腰を降ろし大休止。暑くはないが、涼しくもない。赤トンボが多数乱舞していて、すぐ目の前に置いたストックの先に変わりばんこに停まっていく。

40分ほど休憩して腰を上げると、途中で一緒だった中国人の若者達が到着。「辛苦了」ですね、広東省の珠海から来ていると言ってました。また木道が始まるあたりで、一合目で追い抜いた普段着の若いカップルが上がってきた。追い抜くときに「この二人はきっとどっかで引き返すやろな」なんて思ってただけに、ちょっとびっくり。そして心の中で二人に拍手を送りました!
帰りはそれこそ駆け下りるように降りる。大山ではストックが有効です。できれば一人で二本あるとより一層便利です。膝とか腰への負担が全然違いますよ。

予想外に消耗もあって、決して楽しくはなかった大山山行でした。
やっぱり、メジャーな山域には合わないのかな。それとやはり早朝に歩くべきだったかな。そしたら少なくとも登りの時にもう少し人が少なかったはずだ。 これで、初秋に予定している富士山はちょっと考え直さねば...。そんな事を考えながら大山を後にしました。
途中、米子道の湯原ICで途中下車して「下湯原温泉・ひまわり館」の露天風呂で大山の汗をキレイに流して帰りました。気持ちよかった!

おつかれさまでした!

 

登山口11:00〜12:15六合目12:25〜13:20弥山・山頂14:00〜14:45六合目14:50〜15:50登山口

 

弥山の山頂標識
地震前の1710.6mの表示が残る
弥山から見る最高峰・剣が峰(奥のピーク)
山頂付近に咲くシコクフクロウ 近くで見ると南壁も男性的
溝口から見上げる大山