この前、蓼科の帰り、中央線の列車から見上げる恵那山は見事だった。
アルプスからはずれた独立峰で、裾野を含めたシルエットがなんとも言えず美しい。
アプローチは長そうだけど、天気がいい日にいつか歩いてみたいですね。
さて、今回歩いてきたのは大峰山系の釈迦ケ岳(1779.6m)。
どうして釈迦ヶ岳かと言うと、地図を買い、大峰山系で日帰り可能な山を探したところ、手頃な山がこの釈迦ケ岳だったというわけだ。
登山口までクルマで行け、駐車可能なスペースもあると言う。歩き始めて山頂までの目安は2時間弱。大峰山系屈指の展望。しかも高度差もそんなにないようだ(600m程度)。これならボクの足でも大丈夫だろう。
前日の土曜日は、年に何回あるかどうかという日本晴れだった。ほんとはこの土曜に歩くはずだったのに、諸般の事情により出遅れてしまい、この晴天を見上げて溜息をつぃていた。翌日の天気予報を見たり、ひまわりの画像を調べてみると、日曜(5/26)も引き続き好天に恵まれそうだ。ただし、土曜のように一点の翳りもないほどの晴天かどうかはわからない。
クルマでのアプローチを調べてみると、さすが近畿の天井と呼ばれているだけはある。けっこう遠い。阪神高速で松原へ、ここから西名阪に乗り法隆寺まで、ここで一般道に出て五條まで南下。168を下がり大塔村を経て十津川村。そこから林道を20キロほど走るようだ。3時間くらいかな。
逆算した結果、1時に起きて、1時半より少し前に出発。もちろんまだ真っ暗で朝の気配は皆無。途中、法隆寺で降り損ねて郡山まで行ってしまった。インター付近のコンビニで一息入れる。R168はなかなか厳しい道で、あと3つ足せばいつも走っているR171とは...。
旭橋に着いたのが4時少し前。この調子だと明るくなる前に登山口に着けるかな、なんて思っていたけど甘かった。関西電力の奥吉野発電所の手前で、道にいきなりシカがいる。ヘッドライトに驚いて走り去る。一頭どんくさいのがいて逃げ遅れてしまい、道端に呆然と立ちすくんでこちらを見ている。スピードを落として徐行して彼(彼女?)の横を通り過ぎる。
発電所を過ぎるとダートと舗装道路が交互に現れる林道だ。何キロかおきに「登山口まで○キロ」の標識があらわれる。この林道で一気にペースダウンしてしまい、登山口に着いたのは、もうすっかり明るくなった4:45だった。
先行車が既に停まってる。駐車場には何張かのテント。このテントのお陰で、駐車場にクルマを入れられない。人の迷惑を考えない困ったキャンパーだ。路肩にクルマを停め、手早く準備をする。
最初は植生の中、九十九折りの山道をひたすら登り高度を稼ぐ。正直言ってつらい。濃厚な朝の森の空気を胸一杯吸い込んで一息入れる。ところどころ岩があったり、むき出しになった崖があたりで、変化があるぶんまだマシかな。
やがて、九十九折りが終わり、角度もぐっと楽になる。どうやら尾根筋に出たようだ。石楠花の美しいピンク色の花がボクをなぐさめてくれる。
峠からの登山道に出会う。植生はなく、辺りは疎林になり、まるで高原の散歩道の趣だ。高い木は枯れたまま立ってており、下生えが繁っている。この風景は六甲ではちょっとお目にかかれない。道は楽勝で、しんどさはまるでない。山歩きと言うよりも、散歩だ。朝露がスパッツを濡らすが、心地よい。
「ケ〜ン」という甲高い鳴き声を残して、何頭ものシカが斜面を駆け下りていく。ほんとにシカが多い山だなぁ。
中には人に慣れているのか、10mほど近づかないと逃げ出さない強者(?)もいる。
尾根筋を着実に辿っていくと、小さなピークを過ぎる。このあたりから今日の目的地・釈迦ヶ岳を見ることが出来る。その他、前後左右、ぐるっと360度全部山だ。見渡す限り山が連なっている。この景色には圧倒される。
仙杖平というのっぱらの標識を過ぎると、いよいよ最後の登りだ。キャンプサイトを右手に通り過ぎると、最初で最後の水場。冷たくて気持ちがいい。ここから10分ほどがちょっと辛い登りだがしれてる。やがてあっけなく山頂。
思った通り、3mほどのお釈迦さんの銅像が建っている。
狭い山頂は嫌になるほどハエが飛んでいる。ちょっと異常な数だ。登山者のほとんどがここでお弁当を広げるからそれを目当てにハエが生息しているのか、それともこの辺りでキジ撃ちをする人が多いのか、それとも動物の死体があるのか? どうしてかはわからないけれど、折角の山頂が台無しだ。
手早くシャッターを切り、早々と退却した。
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山頂のお釈迦さん 逆行で上手く写ってないね |
来た道を水場まで戻り、ここで大休止。
この山も蓼科山のように、野鳥たちが信じられないほど近くまで来て歌声を聞かせてくれる。これは森の世捨て人さんを見習って携行用の図鑑を買うしかないな。
相変わらずの山またやま。北には八経ケ岳(1914.9m)を主峰とする山塊が指呼の間にあり、ボクを縦走へと誘ってくれる。ここから2時間もあれば歩けるだろうか(実は4時間半が目安)。
よっしゃ、次の万馬券でテントを買おう! 何時になるかわからないけど。
南か東には目を凝らせば太平洋がのぞめるかと思ったけど、双眼鏡を使っても地平線は霞んでしまい、連綿と続く緑の山しか見ることができない。日本もでかいんだなぁ。
ここから見える景色は、蓼科山から見た風景と全く違うけど、容易に人を寄せ付けなさそうな神々しさは同じだ。昔の人が山には神が宿ると考えたのも頷ける。
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八経ケ岳が「指呼の間」? |
尾根筋にある小ピークを過ぎたあたりから、人とすれ違うようになった。九十九折りまでに20名はすれ違ったでしょうか、中にはまたしてもリードを外した犬を連れているアホがいて、ほんまにどついたろかと思ったけどやめといた。
山道での犬の放し飼いは迷惑以外の何物でもない!
結局登山口まで50名は登ってきた。人気があるコースなんだな。ほんの少しのしんどさで、あの高原の散歩コースに出られるんだから当然かな。ボクも歩きながら、このコースなら345さんでも大丈夫かな、なんて思っていたもんね。 思わず、誰かを誘いたくなるような、そんな魅力を持ったコースですね。
クルマに戻り、着替えている最中にもどんどんクルマが到着する(帰りの林道でも何台もすれ違った)。
困ったキャンパーはまだ、そのまま。この暑いのにまだ寝てるの?
この帰り道が怖かった。行きはまだ暗くて見えなかったんだけど、この林道の谷はちょっとやそっとじゃない。もし、ハンドルを誤って転落したら、それこそ100mはあろうかと言う谷底へ一直線だ。しかも、対向車がどんどんやってくる。ガードレールも無いしね。手のひらにびっしょり汗をかいて、ようやく発電所までたどり着きました。ほっとした。
帰りは、五條で柿の葉寿司を買って帰りました。
次はどこを歩きましょうか。
おつかれさまでした!
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