「延安の娘」

02/Feb./2004

  

「中国文化大革命というのが一体何だったのか」
「“下放”という政策の目的が一体どういう意味なのか」
実のところ僕も良く知らない。

しかし、都会の若者たちはみな毛沢東の一言により、“農村にて農作業に従事し、革命の原点を学べ”と農村へと送られた。そこで待っていたのは過酷な重労働と厳しく管理される集団生活。果たしてそれにどういう意味があったのだろうか? 中国の歴史ではよく農民の反乱が国家の存亡を揺るがしてきたことがあったと思う。しかし下放政策が、革命の原点に繋がったとは思えない。

革命の聖地といわれる狭西省の延安。
ここで産まれ育った娘のハイシアは実の両親を知らない。彼女は30年前、この地に下放されてきた若者たちの中の一人の女性が産んだ子だったのだ。父親も同じ下放青年だった。恋愛さえご法度だったというその当時、密かに産まれた赤ん坊のハイシアは、そのまま農村に預けられたのだった。

そんな彼女が実の父親に一目遭いたいと願う。まだ30歳くらいだと思えるハイシアの顔のしわを観れば、彼女がそれまでどれだけ苦労してきたのかが痛々しく思える。
人間には親、先祖という自分産まれてきたルーツというのを知りたがるものなのだろう。それは自分が生まれてきた意義、そして生きる目的を求めているのかもしれない。

彼女の両親との再会を追いかけながら、忌まわしい過去の記憶となった下放政策が今なお人々を苦しみ続けているという事実を写し出したドキュメンタリー映像。
しかしこの作品の終局には結論を得ない。

この映画で浮彫りにされる真実の答えは、自分の心の中にあるのかもしれない。歴史を問う事は、自分を問うことであると思った。

次回は「バレット・モンク」をご報告します。