「北京(2001年12月)」

北京の変貌を目の当たりにする


その4・北京の中心部をほっつき歩く

  

サムギョッサルでほろ酔い気分になる。
不思議なもので、台北に行っても、香港でも上海でもなぜかこの料理を食べてしまう。中華料理屋がどこにでもあるように、韓国(朝鮮)料理の店も、アジアの国際都市と呼ばれるような街ならにならまずどこにでもある。概して日本で食べるより美味しくて安い(例外もあるけどね)。
中国にしては清潔で気持ちのいいこのお店を出たときには、当然もう真っ暗。ホテルまで歩いて帰れる距離でもないし、バス停を探しす気力もない。いささか安易だけど、そーさんと二人だしタクシーで帰る。北京では比較的簡単に流しのタクシーを捕まえることが出来る。大抵はダイハツのシャレード。中国名は「夏利・シャーリィー」。光沢のある小豆色に塗られていることが多い。もう少し高級になるとワーゲンのサンタナかシトロエン。いずれも、技術供与を受けた中国の合弁企業が生産している「国産車」。

ホテルに帰っても、もう暗いのでこれと言ってすることが無いので、ここで中国4000年の歴史の重みを体験すべく、出張マッサージをお願いすることにする。
ボクはちっとも肩こりを感じない「鈍感」な男で、肩を揉んでもらったりマッサージをしてもらうと、気持ちいいいどころかくすぐったくて仕方が無いからパス。そーさんが全身マッサージを受けることになった。
ホテル内にあるマッサージセンターに電話を掛けてお願いすると、すぐ来てくれるらしい。待つことしばし。現われたのはえらく体格がいいお兄さん。35歳くらいかなぁ。白衣を着て、頭にもちょこんと白い帽子を載せている。このお兄さん、日本語も英語も駄目だけど、マッサージはどこでやってもだいたい同じだから、身振り手振りでだいたい通じる(らしい)。ボクはその様子を片目でみながら、部屋のソファで本を読む。
凄いのは、彼の神秘的とも言うべき「パワー」。彼が両手をこするように、揉むようにすると、たちどころにその手のひらには高熱を発する(らしい)。揉んでもらったそーさんもそう証言しているし、見ていたボクにもそれはわかった。
およそ30分ほどの全身コースが終わってから、お兄ちゃんが「頭のコースはどうだ?」と営業をする。ためしにそれもお願いする、日本人はいいお客さんだねぇ。
日本のマッサージより数段気持ち良かったそうです。中国4000年の歴史を体感したと申しておりました。それがどう気持ち良かったのかを詳細にレポート出来ないのが残念ですけど、それは仕方ない。そーさんは各地でマッサージを経験しているので、比較できるけど、ボクは経験地がゼロだからね。お値段も忘れてしまいました。ただ、びっくりするほどの金額では無かったような気がします。
このホテルには地下にマッサージセンターがあり、そこへ出向いてマッサージをしてもらうことも出来るし、今回のように部屋に来てもらうことも可能です。

冬晴れの北京で街を見上げると...

朝食をそそくさと済ませて、出掛ける。何箇所かあたりをつけてあるショッピングセンター(?)に行く予定。この日もいい天気、しかもそんなに寒くない。きっと氷点下ではないはずだ。
目的地の近くにあるホテルまでタクシーで移動。もう、怠惰になっていて、ついついタクシーに乗ってしまうんだなぁ。
ところが、古い記憶を辿って行ったもんだから、お目当てのショッピングセンターは閉鎖されていて、誰もいない。中国ではありがちなことだ。ここは工人体育館のすぐ近く。北京では2008年のオリンピック開催が決まり、運動施設はもちろん街並も整備が急ピッチで進んでいる。ここ工人体育館もボクの記憶よりずっと綺麗になっているし、工人運動場を含めた外周もその緑地帯も美しく整備されている。
そんな歩道をぶらぶら歩いていると、前からおじさん、おばさんがビニール袋をぶら下げて三々五々歩いてくる。この人たちが持っているビニール袋には野菜や肉、それに豆腐なんかが無造作に入れられている。
「こりゃこの近くに市場があるに違いない!」

予想通り、しばらく行くと人が集まりだし、平屋の建物からは煙とも湯気とも見分けがつかない白いものがもうもうと上がっている。近づいて行くと、そこはどうやら市民プール(!)のよう。確かにそう書いてあるんだけど、これはどう見ても常設の市場。何箇所にブロックが分かれていて、雑多な日用品、野菜、白菜、果物、そして肉(鳥、豚)などが主に売られている。白菜だけは他の野菜とは独立してブロックがある。こりゃ凄い。以前、上海の人が「北京は白菜ばっかり」と言っていたのを思い出す。
総面積はけっこう広いんだけど、すごいく多くの人が集まっていて歩くのも一苦労。肉類のブロック以外は野外になっていて、夏には子供用のプールになるんだろうなってわかったりするのがおかしい。
こちらは何を買うわけでもないので、人波をかきわけてうろうろ歩くだけ。それでも面白い。ただ、活気という点ではあんまり感じられない。どうやら、南方にある地域の市場の方が活気に満ちているようだ。寒い中、野外にあるので仕方ないか。

トイレの横でハクサイを売るトラック こっちはキャベツ

この市場が面した道路に路側帯に見慣れない遊戯具が置いてある。昨日、語言大の周辺をうろうろしているときにも見かけた。ようく観察してみると、どうやら大人が運動する器具のようだ。
ウォーキングマシンのようなものや円盤の上に乗り腰を左右にまわす運動をする器具など(もっと一杯あったけど忘れてしまった)。
この一角は子供たちよりもお年寄りの方が多そう(市場もそうだった)。リタイヤした老人が運動不足を解消するのに使うのかな。ボクもやってみたけど、見かけによらず、なかなか楽しかったりする。熱心にすれば、すぐに一汗かいてしまいそうだ。家にも一台欲しいょ。

これはウォーキングマシンのようなもの

結局、この日は北京の街角を薄暗くなるまで歩き回った。これと言って買い物をするわけでもなく、それこそへとへとになるまで歩いた。
何度か目の北京訪問で、初めて王府井に行った。さすがに通りは広く、人もたくさんいる。通りの左右にあるお店はどれも大きくて立派。でも、何の感慨もない。きっと、もう訪れることもないだろう。
それは、すでにこの界隈は北京という特徴を失っており、中国の大きな都市ならどこでも同じような感じだからだ。ここが武漢でも広州でも瀋陽でも大きな差はない(ちょっと残念)。着いた日に歩いた西単がスタイリッシュだっただけに、ここ王府井界隈の画一された再開発ぶりにはちょっと落胆させられるょ。
薄暗くなってから、王府井からそう遠くない通りで、貧しい女性の物乞いにつきまとわれたのには困った。でも、それくらい。今回は困難に直面することはほとんど無かった。

スターバックスの看板もちらほら

昼食は「餃子」。もちろん「水餃子」。茹で上げてはあるけど、スープの中に浮かんでいるわけではない。奥のテーブルに陣取ったグループにはスープに入った餃子が運ばれるので、「それをくれ」と言うが、「没有」とあしらわれてしまう(ちょっと悔しい!)。
夕食は通りかかったお店で、庶民的な鍋をつつく。地元の人がそこそこ入っている、こじんまりとしたお店。料理は火鍋(中国風しゃぶしゃぶって感じですね)でスープの味を選び、それから中に入れる具材を頼む方法。美味しくなかった訳ではないけど、特筆すべき味でもなかった。特に張り込んでオーダーした「蝦」が親指の爪ほどの大きさしかないムキエビだったのが残念。
いずれにせよ、トイレがそんなに汚くないのがわかっているので、安心してビールを飲めるのが嬉しかった(変な話しだけれど)。
一番美味しかったのは、やっぱり動物園の前にある地下道で食べた「焼き芋」かな。


北京は驚くべき速度で変貌を遂げている。まさしく現在進行形で、その勢いは止まりそうにない。この目を見張るべき発展は、そのまま中国の現在の勢いを感じる。中国の1980年代から2010年にかけての30年間は、まさしく文明開化の時代なのだろう。ここから生じる歪が悪い方に出なければ良いのだが...。

翌日はホテルの地下と直結しているショッピングアーケードで家人などへのお土産を幾つか購入。
大晦日とあってか、行きしなよりもさらにガラ空きの全日空機で関空へ戻りました。

おしまい。