「ベッカムに恋して」

14/Apr./2003

  

さて今回は試写会、「ベッカムに恋して」2002年イギリスの映画。また試写状を頂きました、有難うございます。
タイトル通り、あのベッカム。ベッカムに憧れる、ひとりの少女を主人公にしたお話し。2002年なのでイギリスではちょうどワールドカップの前に公開され、大ヒットした作品です。この映画、サッカーを題材にしたスポ根ドラマに思われそうだけど、実は違う。

舞台はイギリス、サウスホール。
主人公のジェスはサッカーとベッカムを愛するインド系イギリス人の女の子。
いつも近所の公園で、男の子に混じってサッカーに興じていた。そんなジェスをふと見かけたのがジュールズ。彼女は地元女子サッカーチームのひとりだった。ジェスの腕(脚?)前に感心したジュールズは、ジェスに一緒にサッカーをしようとチームに誘う。
ところが伝統的なインドの慣習を大切にする彼女の家庭では、女子がサッカーをすることなど、許されることではない。猛反対する両親は、ジェスにサッカーをすることを禁じた...。

ストーリーは、彼女のサッカーにかける情熱を中心にして、そこに恋、家族の問題などがてんこもり。
ジェスを演じる主演のバーミンダ・ナーグラは撮影時に27歳(!)。「ミモラ〜心のままに」の主演アイシュワリヤー・ラーイもそうですが、インドの女性は童顔の方が多いんでしょうか。一方のジュールズを演じるキーラ・ナイトレイは19歳だから対照的ですね。他にもインド映画で観たことがある人が出演してました。また冒頭ではリネカーが解説者役で出演。もちろんベッカムもちょこっと登場します。

それにイギリス映画だけど、ノリはもう半ばインド映画。監督自身もグリンダ・チャーダというインド系イギリス人の方。いつものように、最後はもう皆集って騒いで飲んで唄って踊っての大宴会。あの唄と踊りに興ずる人々のバイタリティを目にした人は、さぞ魅入られたことでしょうね。劇場の大スクリーンで、あれだけ大騒ぎされてしまえば、もう僕も思わず身を乗り出して、一緒に踊ってしまいそうでしたよ。

一般にはあまり馴染みのないインド家族を描いているのですが、サッカーという身近なスポーツが題材なだけに、イギリス人も受け入れられやすかったのではないでしょうか。
イギリス社会におけるインド人の立場やその家族を描いたこの作品、他にもアイルランド人、それにゲイやレズといった部分もちらっと触れていたりします。ある意味かなり人種問題に入り込んだ作品に思えますが、それでいて多くの人に観られて人々の共感を得たことでしょう。
「見事に魅せられた!」という映画、監督もほくそ笑んでいるかもしれません。
でもそれだけ映画として完成されたいい作品です(ネタを引っ張りすぎるところや、最後の結婚式が終わってからの長さなどちょっと蛇足的なところもあったように思えました)。

帰り路は、そんな踊りを思い出してウキウキしていましたが、ふと考えました。インド社会の宗教の対立や人種の階級差別はもっと根強く複雑であるから、実際は映画のようにハッピーエンドにことが進むことも少ないんだろうなぁと。でも、こういった映画がキッカケになって人を繋いでいくんだろうと、その素晴らしさを改めて思い起こしました。

次回は「「あの子を探して」ができるまで」をご報告します。