失われた龍の系譜/トレース・オブ・ア・ドラゴン

香港と大陸の間に横たわるものは...



  

大阪ではあっと言う間に終了してしまい、いつか神戸でかかるはずだから心待ちにしていた作品。でも、ぴあを見てもなかなか番組表に載ってこないので、もうすっかり諦めていたら、レイトでひっそり。ボクもこっそりと出掛けました。

映画そのものを評価するには難しい。
ここで展開されるストーリーをジャッキー・チェンのルーツ探しと割り切って見るのも間違ってはいない。でも、製作側の意図をウラ読みしたら、なんだか今の中国が内包している諸問題を炙りだしているような気がするんだけどなぁ...。

まるで淡々と描かれていて、このジャッキー・チェンが今まで知らなかった、父母の過去、兄や姉の存在を知って、彼がどう思ったのか、どういう行動を取ったのか。それが、全くと言っていいほど描かれていない。
否定はしない、でも積極的に肯定もしない。そうではなく、自分とは全く関係のない場所で、関係のない人々の歴史が明かされ、それを感動もなく受け取っているだけのように見えた。
すなわち、第二次大戦後の中華人民共和国成立のプロセスの中で、香港や台湾へ移住した人たちにとって、この手の話しはその数だけ存在している。そして、家族を大切にする中国人にしては冷淡とも感じてしまうほど、淡々と大陸に存在する己の累系に対して語る。

きっと、映像や言葉では表現できないほどさまざまなことがあり、それら全てが過ぎ去ってしまった現在となっては、却って淡々としてしまうのだろうか。そんな気がする。
それほど、共産主義国家と自由主義国家の狭間には語れない事情が横たわっているのだろう(こんな一言で表現して良いのかどうかわからないけれど)。

だから、ボクはジャッキー・チェンの両親の姿を追いかけながら、香港で暮らす大陸出身者の声にならない思いを見せていただいた。きっと、本当の思いの100分の1もわからなかったのだろうけれど...。

観ていて面白い作品ではないのは確かです。
でも、ちょっと考えさせられるお話しであることも事実です。チャンスがあれば一度ご覧下さい。

おしまい。