五線譜のラブレター/DE-LOVERY

ジョニ黒を飲みながらカルチェのシガレットケースを...


  

何を期待していたわけでもなかった。それでも、この映画は力強くボクの心をつかみ、そして酔わしてくれた。
このところ、ミュージカルシーンを使った作品を続けて拝見して、元からミュージカルが嫌いではなかったけれど、ますます好きになってしまう。この映画、ミュージカルに詳しければもっと面白かったのに違いない。
凝った構成になっていて、途中からではなく、上映時間前にちゃんとスクリーンの前に座って待っていていただきたい(お手洗いもちゃんと済ませてね)。

かつてブロードウェイやハリウッドの売れっ子作曲家として名を売った男・コール・ポーター(ケビン・クライン)の元に古い友人が訪ねてくる「今から貴方の人生を振り返ってみよう」と。
1920年代、場所はパリの社交界。そこでピアノを弾くコール・ポーターは、社交界の花形で最近離婚したばかりという噂の美女リンダ・リー(アシュレイ・ジャッド)に気を引かれる。
(しかし、こんなに映画のような出会いや、映画のような生活が本当にあったのだろうか?)
やがて二人は結婚をする。が、実はコール・ポーターには男色の趣味もあった(ここのパートの処理はなかなか上手く、嫌悪感を持たなかった)。
(それにしても、裏から表からコール・ポーターを支えるリーの献身振りには驚かされます)
やがて、ポーターの才能を信じたリーの後押しもあり、彼はブロードウェイ進出を果たし、次々とヒットを飛ばす。そしてついにハリウッドに招かれる...

この映画の凄いところは、観ているボクをある意味夢の世界へ連れて行ってくれるところだろう。花形の社交界に、よき妻、いい友人に囲まれ、紆余曲折しながらも成功への階段を上っていく。
それが、ちっとも嫌味ではなく、時に人としての弱さも苦しみも垣間見せながら、充分こちらが納得するような形で展開していく。
だから、今までミュージカルを見たこともないとか嫌いだという方でも充分楽しめるし、酔えるのではないでしょうか? そしてミュージカルを見てみたいと思わせるのではないでしょうか?
ミュージカルとか、歴史的作曲家の半生記というジャンルは飛び越えて、恋愛物としても秀逸の出来だと思います。

アシュレイ・ジャッドがいい。 今まで気が付かなかったけど、ボクが観ただけでも「恋する遺伝子」「フリーダ」「ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密」に出演していたらしい。芝居が上手いのか今回の役柄がいいのかはわからないけれど、今後も注目していきたいですね。

この日は開幕週の日曜日(すなわち2日目)の夕方の回、ボクは時間の巡りあわせで30分以上前にロビーにいたんだけど、そのときはそんなに混んでいる印象を持っていなかった。シャンテシネの上の階にある大きなスクリーン。どんどん人が入ってきて、上映前には全ての席が埋まってしまいました。恐らく立ち見の方もいらっしゃったのではないでしょうか。

大阪では梅田のOS劇場C・A・Pで上映中ですね(京都では新館の京都シネマです)。きっとお正月も上映していると思います。まずまずのオススメ。夢の世界に浸りたい方はどうぞ!

おしまい。