エイプリルの七面鳥

観る人をやさしい気分にさせてくれる


  

この週は日月を東京・埼玉で過ごし木は広島、その日のうちに福岡へ移動して金は早朝から長崎の多良見、大村で泊まり土曜の夜に飛行機で大阪へ帰ってきた。出張が重なるのは久しぶり、本当は富山にも行くべきだったんだけど、身体が一つしかないので、それは他の人に行ってもらった。

で、広島での仕事を終え、さらに西へ向かう新幹線に飛び乗る。九州へは年に数度行くけれど、新幹線を使うのは久しぶりです。ウトウトしているうちにあっと言う間に博多に着いてしまった。
シネ・リーブル博多駅は去年もお邪魔しています(「トーク・トゥ・ハー」)。あの時はそこそこ客さんが入っていましたが、この晩はガラガラでした。

どういうお話しなのかを全くノーチェック。
いかにも低予算の映画らしいつくりなんだけど、映画の良さや面白さはその予算と正比例しないところが面白い。

最初は何がなんだかよくわからない。 ただ、時間の経過とともにだんだんとストーリーの輪郭がはっきりしてくる。ただ、この映画は説明的なせりふや描写は極力排除されている。
簡単に言ってしまえば「都会で暮らす若い女性が、感謝祭に故郷に住む家族を迎え、そのご馳走を作る」ただそれだけのお話し。しかし、そこにはその家族が抱えている外からは見えない問題がある。この感謝祭のご馳走がその問題を解決するきっかけになるのか?

都会で暮らしているのがエイプリル(ケイティ・ホームズ)、住むアパートでアフリカ系アメリカ人の青年ボビーと暮らしている。感謝祭のディナー、そのメイン料理はもちろん七面鳥。その朝までにエイプリルは自分が考える料理の材料は買ってある。今から下ごしらえをして、鳥をオーブンに入れるだけ、のはずだったけれど、世の中そう上手くは行かない。
エイプリルが住むアパートはいろんな意味で米国の都会での生活をを象徴している。没交渉の隣人たち、しかも国際色が豊か、奇人変人の巣窟のように思うかもしれないけれど、これはあり得ることで、現在の日本だってこんなアパートはあるかもしれない(ただし、その家にもオーブンがあるとは限らないけどね)。
一方、感謝祭の朝、長女エイプリルが住む都会へ向かう家族は...。ここも何とも個性的なメンバーが揃っている。中でもひときわ異彩を放っているのが母親(パトリシア・クラークソン)。
だんだんこの家族とエイプリルの関係がボクにもわかってくる。

そして、お話しは、エイプリルがこの料理を上手く作ることが出来るのか、もうひとつ今夜の感謝祭のディナーが持つ意味は何なのか、その謎解きのような様相を帯びてくる。アクセントにボビーとその仲間。
この映画に悪い人や悪意を持った人は出てこない。誰もが良かれと思って行動しているのだけど、ちょっと運が悪かったり、思いやりが足りなかったり、意思の疎通が上手くいっていなかったり...。それが少しずつ積み重なってしまう。

ハラハラさせられ、ほろっとして、そして...。

思わぬ拾い物(そう言っては失礼かもしれませんが)。びっくりしてしまうほどの良い作品ですね。かなり地味に上映されていますが、時間を割いてご覧いただいても損はしないと思いますょ。かなりオススメ!
大阪では年が明けてからテアトル梅田で上映の予定があるようです。

おしまい。