コニー&カーラ

ニア・ヴァルダロスに注目!


  

「こりゃポスターのビジュアルがあかん」
映画を観終わって、思わずそうつぶやかずにはおられない。せっかくの“快作”なのに、こんなポスターではなかなか客さんが呼べない。
「こんなビジュアルを提案したデザイナー出て来い!」

実は、ボク自身もこの映画については全くのノーマークだった。ノーマークどころか、この映画があること、そして上映されていることも知らなかった。気付いていなかった(アンテナが錆びてます)。それが、悪友のカプから「あんなぁ、『ビッグ・ファット・ウエディング』の人の映画上映されるねんで、観に行かなあかんゎ」って教えてもらい気が付いた。
しかし、ナビオでの上映期間は凄く短かったし、なおかつナビオでマイナーな作品を観ようとすると劣悪なスクリーンで掛かることが多い。さらに、猛烈に忙しい時期でもあり、気が付くともはや上映は終了していた。関西はここででしか上映してないのに(涙、涙)!

が、よくよく調べてみると、なんと東京のスカラ座でひっそりと続映されているではないか! よっしゃ、チャンスや。神はまだボクを見捨ててはいなかったのか...。ボロボロになった身体のまま、このチャンスを逃すまいと早朝から伊丹に駆けつけ一番の飛行機に乗り込んだ...(いや、まだまだ元気やね)。

とにかく、理屈ぬきに面白い。
『女の振りをする男になりすます女』二人のお話しなんですね(ちょっとわかりにくいけど)。
コニーとカーラは幼馴染。学校時代から食堂をステージ代わりにして唄って踊っていた(まぁ、ブーイングの大合唱を受けながらだけどね)。このコニーが『ビッグ・ファット・ウエディング』のニア・ヴァルダロス。なんと言ってもいつも前向きで逞しい!(羨ましい!)そしてちょっと気が弱いカーラがトニ・コレット。
この二人、シカゴにある空港の待合室にある珍妙なステージで、夜な夜な時間つぶしにしか過ぎないショーを演じていた。誰も見てないけど、ミュージカル好きにはなかなかたまらないょ。
が、ある晩ひょんなことから殺人事件と麻薬取引現場を目撃してしまい、さらにそのブツがコニーの荷物の中に紛れ込んでいたから、さぁ大変。二人は組織から追われる身になってしまった!
この出だしの強引でお世辞にもスマートとは言えない筋運び、一気に映画の中に引き込まれてしまった。

アメリカの人は遠くに行くのにもクルマで出かけるんだねぇ。そんなことを考えてしまう。飛行機や汽車、バスは使わないんだ。高速代も要らないし、ガソリンもさぞかし安いんだろうなぁ...。

やがて二人は流れ流れてLAにたどり着く。
アパートに部屋を借りたのはいいものの、やがて所持金も底を付く。そこでふと気が付いた。
「そうだ!ショウに出てお金を稼げばいいんだ!」
そこで二人が受けたオーディションはゲイバー。なんと二人はドラッグ・クィーン(女装した男性同士の同性愛愛好者)のデュオとして華々しくデビューすることに...。

このへんの倒錯具合やゲイバーのマスターと弟との交流など、ちびっと難しい部分も確かにあるんだけど、そんなの関係なくコニー&カーラが繰り広げる迫力満点のステージの数々に圧倒されること間違いなし!
このステージを観るだけで、充分もとは取れるのではないでしょうか?

他にもいろんな隠し味が忍ばせてあって、何と言っても傑作なのは、組織の手下が二人を追い求めて、さまざまなナイトクラブやディナーショーを回り、どんどんミュージカルに感化される様子ですね。この二人が出ているわけないのに、ブロードウェイにまで出かけていってその舞台に酔うなんて、なんちゅう素敵なシーンでしょう!

観ていて、あんまり嫌味なシーンとかはない。これは上手い。日頃は「同性愛なんて...」と思っているんだけど、あるシーンでは完全に彼らの味方になってしまっている。
いろんなミュージカルナンバーが流れる中『ロッキー・ホラー・ショウ』が入っていたのも嬉しかったな。

本来は大きいスクリーンで堪能していただきたいのですが、残念ながら関西での上映は終了してしまったようです。惜しいなぁ。それにこんなに面白いのに、ほとんど話題にもならなかったのはなんでかなぁ。
多分、DVDやビデオになるでしょうから、そちらでお楽しみください。その場合には、まず『ビッグ・ファット・ウエディング』をご覧になってからの方が、よりお楽しみいただけるのではないかと思います(決して、続編とかそんなんではありませんけどね)。
理屈とか抜きにして「面白い映画を観たい」っちゅう時にオススメの一本です、はい。

おしまい。