「[足包][口巴]孩子/homerun」

「運動靴と赤い金魚」のリメイク


  

なんと、もう何年も前に観たイラン映画「運動靴と赤い金魚」のリメイクだった。
親映画は素晴らしい出来で、この映画から中華圏以外のアジア映画に目覚めたと言っても間違いではない。
テヘランの貧しい家に住む兄妹が主人公で、兄が修繕に出した妹の通学用のズック靴を誤って紛失してしまうことを発端に繰り広げられる人情劇。とにかく、この兄妹がかわいいのなんのって、この二人のキャラクターだけで映画は成功したようなものです。
それになんとも思わせぶりなタイトルが良かった。このタイトルはラストシーンに凝縮されているのは、ご覧になった方ならご存知のとおりですね。
もちろん、この映画がリメイクされているとは知らなかったし、そのリメイクされた映画が香港で上映されているとも知らなかった。ただ、知っていたのは子供たちを主人公にした作品であるということだけ(インターネットでこの映画のポスターを見ていたのです)。
資料を見ると(香港の映画館に上映中、上映前を問わずチラシなどが置いてあるのは大変珍しい)、12月初旬の公開時にはメジャーな扱いでロードショー上映され、暮れも押し詰まった今(12/27)は、もうここでしか上映していないことのようでした。

さて、この映画のお話し。
最初のクレジットで、この映画ががリメークである旨が宣言されている(英語の表記なので理解できた)。そこでボクは「ハッハ〜ン」と全てがわかった。 舞台は1960年代のシンガポールにすっかり置き換えられている。出てくるエピソードもなかなか忠実になぞってある。もちろん全てではなく、すっかりいじられている設定もエピソードもある。
ただ、基本になるストーリーは一緒。エンディングは違うけどね。

しかし、今時、通学用の運動靴を修繕に出してまで履く子供がいるのだろうか。また、靴を買うお金がなくて兄妹で一足の靴を共有することがあるだろうか。きっと無いだろうな。
日本ではまず無い。シンガポールでもきっと無い。だから、60年代の設定がなされているのだろう。
この靴以外にも主人公の家庭が貧しさを示すエピソードが妙に生活感タップリで、観ているこちらはどんどん感情移入してしまうのね。
親映画では登場しなかった別の学校へ行っている富裕層の子供たちと、兄のクラスメートたち。この大勢の子供たちにの登場によって、親映画には無かった「少年たちの友情」という味付けが上手く付けられている。それにインド人の校長先生もいい味出してますょ。

兄はアリ少年に負けず劣らずかわいい。アリ君よりちょっと大人っぽいけどね。だけど、妹さんは親映画の方が良かったかな。但し、妹さん親映画よりもこちらの方がうんと出番が多い、見慣れてくると彼女もなかなかかわいく見えてくるから不思議!
悪い人は一人も出て来ない。そして、知らず知らずのうちにこの兄妹を応援したくなるんだなぁ。

ここでこれ以上この作品のストーリーをお話しするのは野暮でしょう。
「運動靴と赤い金魚」をまだご覧になっていない方は、是非ご覧になってください。丹念に探せばどこかで上映されることもあるでしょうし、もちろんビデオにもDVDにもなっています。そして、既に親映画をご覧になった方は、舞台が中華圏に置き換えられたらどんな風になるんだろうと考えてみてください。
それだけで、楽しくなりますね。

ひょっとしたら日本での公開もあるかもしれません。その際は是非ご覧いただきたいですね。
シンガポールの作品ですが、全編普通話(北京語)で一部が英語。今回は例によって繁体字の中国語と英語の字幕付きで、音声はオリジナルでの上映でした。

湾仔(ワンチャイ)の海べりにある商業ビルの地階(日本風に言うと1階)にひっそりとあるこの影藝戯劇院(Cine-Art House)、チケット売場のおばさんもヒマそうだったし、もぎりのおっちゃんもアクビを連発している。設備そのものはクラシックではなく、なかなか新しそうなので、商業ベースに乗りにくい作品を上映する劇場なんでしょう。日本だとアート系とか単館系って感じですね(両方とももう死語か)。一日に一回だけの上映にも関わらず10数名の入りとは淋しいものです。
ちなみにこの映画のシンガポール版のsiteはこちら。中国語と英語が併記されています。

おしまい。

※追記※
その後の調査で、この作品は2003年の「東京国際映画祭」で上映され、同時に監督のテーィチインもあったことがわかりました。